研究課題/領域番号 |
23560387
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
藤井 知 千葉大学, 産学連携知的財産機構, 特任教授 (30598933)
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キーワード | ダイヤモンド |
研究概要 |
ダイヤモンドは材料の中でもヤング率が高い、誘電損失が小さい、熱伝導度が大きい、バンドギャップが大きいなどの傑出した特性を持っている。本申請者らは、ダイヤモンドの高いヤング率を活かした高周波(GHz領域)の弾性表面波素子(SAW)の研究開発を行ってきた。本研究では、さらに、材料としての特徴を引き出すために、①10W以上の耐電力性を持つ、②電気機械結合係数が9%以上と大きい圧電体薄膜のダイヤモンド上への形成、の2点を目的とし、RF-SAWフィルタの研究を進めている。 初年度において、申請者は、3x3mm程度の小型単結晶ダイヤモンド基板上へのSAWフィルタの試作プロセスを確立し、1ポートSAW共振子を試作した。その結果、5GHzにてQが2819と極めて大きな値を得、伝搬損失も波長当たり0.012dBと激減することが出来た。 2年目において引き続き、RFフィルタとして実現可能な性能を得るために低伝搬損失について検討を行った。高圧合成法に加え、CVD法による単結晶ダイヤモンド基板を使い、凹凸の少ない表面を得ることで、5GHzにて5000以上のQ値を得、伝搬損失は0.004dB/λとなった。その伝搬特性が著しく向上したことによりRFフィルタとしての実用化の用途が見えたこと、CVD法によるダイヤモンド単結晶基板が高圧合成法による基板と遜色なくより大型かつ低価格な基板が使えることが示された。また、電気会結合係数向上については、従来の圧電材料であるAlNやZnOからScAlN膜に変更し、単結晶ダイヤモンド上にC軸配向の薄膜を形成することが出来た。その結果、3GHzにて電気機械結合数は6%と向上した。目標の9%には届かないものの従来の1%から実用上使用可能な6%と向上させることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最大の懸念であったSHF帯における伝搬損失は、ダイヤモンド単結晶基板の使用と、滑らかな表面状態の実現により、ダイヤモンドの合成方法にはよらず、5GHz帯においても、劇的に低減することが示され、実用上、問題ないレベルまで到達した。CVD法による大型単結晶基板が十分使用出来ることが示されたため、今後、一段と研究が加速出来る。また、圧電薄膜であるScAlN膜については、ダイヤモンド上にC軸配向したScAlN膜を形成することが出来、その電気機械結合係数が6%以上であることが確かめられた。また、所属する研究機関にて、MBE装置を改造した2元スパッタ装置を構築した。
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今後の研究の推進方策 |
耐電力性について、評価を実施したところ、3.4GHzにて~700mWくらいであり、その故障モードはストレスマイグレーションもしくはゴミによるものであった。原因は、電極材料を純アルミニウムを使っていたことや、クリーンルームではない場所で試作と評価を行っていたと推測される。今後、電極材料を銅にすることや、評価前に洗浄を行うことにより、正確な耐電力評価を行い、耐電力性の向上を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
デバイス作製のための材料等の購入、分析装置の使用料、国際学会における発表(旅費)、論文投稿費を予定している。
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