研究課題
ダイヤモンドは材料の中でもヤング率が高い、誘電損失が小さい、熱伝導度が大きい、バンドギャップが大きいなどの傑出した特性を 持っている。本申請者らは、ダイヤモンドの高いヤング率を活かした高周波(GHz領域)の弾性表面波素子(SAW)の研究開発を行ってき た。本研究では、さらに、材料としての特徴を引き出すために、110W以上の耐電力性を持つ、2電気機械結合係数が9%以上と大きい。圧電体薄膜のダイヤモンド上への形成、の2点を目的とし、RF-SAWフィルタの研究を進めている。 初年度において、申請者は、3x3mm程度の小型単結晶ダイヤモンド基板上へのSAWフィルタの試作プロセスを確立し、1ポートSAW共振 子を試作した。その結果、5GHzにてQが2819と極めて大きな値を得、伝搬損失も波長当たり0.012dBと激減することが出来た。 2年目において引き続き、高圧合成法に加え、CVD法による単結晶ダイヤモンド基板を使い、凹凸の少ない表面を得ることで、5GHzに て5000以上のQ値を得た。そのダイヤモンドSAWの格段の特性向上になり、RFフィルタとしての用途が見えたこと、CVD法によるダイヤモンド単結晶基板が高圧合成法による基板と遜色なくより大型かつ低価格な基板が使えることが示された。3年目においては、電極設計を見直し、5GHzにてQ値が8300を達成し、伝播損失は0.004dB/λとなった。また、電気会結合係数向上については、連携研究者らにより、ScxAl1-xN(x=43%)薄膜を用いたものでは3GHz帯にて電気機械結合係数値(K2)が6%を持つことが示された。これら一連の結果は、ダイヤモンドを使った弾性表面波素子が3GHzを超える周波数帯におけるRF-フロントエンドとしてのSAWフィルタやダイレクト発振器用SAW共振子となりえる十分なポテンシャルがあることを示している。
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IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control
巻: 60 ページ: 986-992
10.1109/TUFFC.2013.2656