研究課題/領域番号 |
23560393
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
小川 勇 福井大学, 遠赤外領域開発研究センター, 教授 (90214014)
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研究分担者 |
池田 亮介 福井大学, 遠赤外領域開発研究センター, 特命助教 (80533364)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 高周波ジャイロトロン |
研究概要 |
本研究の目的は,1 THz領域における出力が10W程度得られる高出力光源を実現することである。そのためには,磁場強度が20 Tまで発生できるジャイロトロンの動作試験において,1 THz領域の発振を得るということが前提である。 超伝導マグネットが発生する磁場強度を掃引しながら,動作試験を行ったところ,多くの磁場強度のところで,焦電型検出器により発振を観測することができた。発振開始電流の磁場強度依存性のグラフと比較し,実験で得られた発振出力について動作モードの同定を行うことができた。 周波数1 THz以上の発振を観測するとき,高出力で得られる低い周波数の発振を分離する必要がある。そこで,ジャイロトロン出力部と焦電型検出器との間に,低い周波数の電磁波を通さないハイパスフィルターを挿入し,再度動作試験を行った。その結果,磁場強度19.3 Tにおいて発振を得ることができた。電子サイクロトロン基本波動作による発振は,ハイパスフィルターのカットオフ周波数以上にならないので,この観測された発振はサイクロトロン二次高調波動作による発振ということになる。その場合,磁場強度と加速電圧を考慮に入れると,得られた発振の周波数は1 THz以上であるという結論に達し,本研究の今後の進展に明るい展望が得られた。 1 THz領域における高出力光源として,ジャイロトロンを確立するためには,発振出力や発振周波数の測定や出力の高品位化を行うことが求められる。特に,周波数測定では,1 THz領域を対象としなければならないので,達成するには,高いハードルを越えなければならない。測定系としては,局部発振器とミキサーよりなるヘテロダイン受信系の整備を進めた。現在,光源としてBWOや分子レーザーを用いて,測定系の動作試験を進めている。間もなく,1 THz近傍までの測定が可能になる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的として,超高周波ジャイロトロンを実現し,その発振の特性改善により,1THz領域の高出力光源を開発することを掲げた。そのためには,ジャイロトロンの動作試験において,1 THz領域の発振を得るということが前提である。光源としての確立のため,発振出力と周波数の安定化及び出力のガウスビームへの変換という課題を達成する予定である。 本研究の計画調書において,「研究が当初計画どおりに進まない時の対応について」で,「1 THz以上の発振を見つけて初めて,本申請の色々な課題を進めることができるため,思うように1 THz以上の発振が見つからない場合に対しての熟慮が重要である。」という記述をした。当初から 1 THz領域の発振を得るという課題が難関であることを強く意識していた。現時点で,この難関の課題を達成できたので,おおむね順調に進展しているという評価をした。
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今後の研究の推進方策 |
ジャイロトロンにより得られた周波数1 THz以上の発振について,局部発振器とミキサーよりなるヘテロダイン受信系を用い,周波数測定を行う。また,この測定系を用い,発振の周波数変動についての評価を行い,周波数安定化のための情報を得る。 発振出力の安定化は,ジャイロトロンのビーム電流を一定に保つフィードバック制御により達成する。出力のガウスビームへの変換を目指し,散乱行列を用いて設計製作した非線形形状の共振器をジャイロトロンに組み込み,高純度モード出力を達成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
翌年度以降に請求する研究費は,当初の計画通り,ジャイロトロンの動作試験のための寒剤代(液体窒素や液体ヘリウム)と,国際会議での成果発表のための旅費に使用する。
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