研究課題/領域番号 |
23560393
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
小川 勇 福井大学, 遠赤外領域開発研究センター, 教授 (90214014)
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研究分担者 |
池田 亮介 福井大学, 遠赤外領域開発研究センター, 特命助教 (80533364)
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キーワード | 高周波ジャイロトロン / 高純度モード出力ジャイロトロン |
研究概要 |
本研究の目的は,1 THz領域における出力が10W程度得られる高出力光源を実現することである。20 T超伝導マグネットを用いたジャイロトロンにおいて,1 THz領域の発振を得ることが重要な課題である。ジャイロトロン出力部と焦電型検出器の間に,電子サイクロトロン基本波動作出力の周波数の電磁波は通さないハイパスフィルターを挿入し,磁場強度19.3 Tにおいて発振を得ることができた。この発振は,サイクロトロン二次高調波動作による発振であり,周波数1 THz以上の発振であることが分かる。よって,本研究の今後の進展に明るい展望が得られた。 光源としての確立では,発振周波数の精密測定と発振出力のガウスビームへの変換に向けた高純度モード出力を達成することが課題である。 そこで,平成24年度は,1 THz以上の周波数を精密に測定できるシステムの実用化と高純度モード出力のための20 T超伝導マグネットを用いたジャイロトロンの共振器を散乱行列を用いて設計製作した非線形形状の共振器と交換しジャイロトロン装置を完成させた。ジャイロトロンの高純度モード出力の動作試験を予備的に行い,周波数は低いものの,いくつかの発振を得ることができた。 周波数を精密に測定するため,局部発振器とミキサーよりなるヘテロダイン受信系の動作試験をBWOや分子レーザーを光源として用いて,詳細に行った。しかし,600 GHzまでの周波数測定は行えたが,1 THz以上の周波数測定は実現しなかった。1 THz以上のミキサーの特性を検討したところ,あまりにもミキサー変換損失が大きくて,現状のままでは,困難であることが判明した。変換損失の過大さを補うため,中間周波信号を増幅すると解決でき,測定が可能になることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,超高周波ジャイロトロンを実現し,その発振の特性改善により,1THz領域の高出力光源を開発することである。 ジャイロトロンの動作試験において,1 THz領域の発振を得ることは達成しており,最初の難関な課題は突破している。次に,発振の周波数を精密に測定することが課題であり,1 THz以上の周波数を精密に測定できるシステムを実用化を目指した。まだ,この課題は達成できていないが,困難となっている原因を解明でき,この課題を突破する方策が判明した。よって,この課題も達成できる目処が見えてきた。 高純度モード出力のための課題では,20 T超伝導マグネットを用いたジャイロトロンの共振器を散乱行列を用いて設計製作した非線形形状の共振器と交換しジャイロトロン装置を完成させた。予備的動作試験を行い,いくつかの発振を得ることができた。今後,詳細な実験を行うことで,この課題も達成できると考えている。 ジャイロトロンの出力と発振周波数を安定化する課題は,本研究のジャイロトロンでは実施していないが,他のジャイロトロンで実施し,実績を積むことがてきている。今後,本研究のジャイロトロンに適用すれば達成できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1 THz以上の周波数を精密に測定できるシステムの感度が低いという問題点は,そのためのアンプを用いて改良する。分子レーザーを光源として用い,周波数を精密に測定できるシステムの動作試験を行い,周波数測定を可能にする。 20 T超伝導マグネットを用いた高純度モード出力が可能な非線形形状の共振器を持つジャイロトロンの磁場掃引しながら,動作試験を詳細に行い,発振出力を得る。 精密な周波数測定系により,発振出力のモード同定を行う。また,出力の放射パターン測定により,高純度モード出力になっていることを確認する。 フィードバック制御システムをジャイロトロンに用い,ジャイロトロン出力と周波数を安定化を実現する。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでの準備により,ジャイロトロン発振の周波数が測定可能になる予定であるが,周波数を時間的に連続測定できるようにするため,ユニバーサルカウンターを購入する。また,ジャイロトロン出力の高純度モード化や出力と周波数を安定化を進めるため,長時間の実験を計画しており,そのため必要となる寒剤(液体窒素,液体ヘリウム)の購入費に使用する。
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