研究課題
これまで病原細菌であるレジオネラ・ニューモフィラ(以下レジオネラと略記)をキャリングビークルとする細菌センサーの開発を行ってきた。その中で,この細菌がMEMSなどのSiで形成されたマイクロ空間で運動を制限されると蛍光を発すること,さらに細胞内寄生を反映した実験により,この細菌特有の蛍光の確認を行ってきた。本年度は,光学検知系との集積化を目指して,マイクロ空間への閉じ込め材料を蛍光に対して不透明なSiから透明樹脂であるPDMSに変更し,マイクロビーズとレジオネラの混合液をPDMS製マイクロ流路に導入するだけで,マイクロビーズの作る空間にレジオネラを閉じ込める簡便な方法と構造の作製を行った。レジオネラの捕獲実験の結果、レジオネラからの蛍光を確認することに成功し、蛍光強度とレジオネラ濃度の間に定量的な関係を見出した。このことは,マイクロビーズとレジオネラを混合するだけで,レジオネラの培養と言う時間を要する操作をすること無くレジオネラを検出できる可能性を示しており,当初の本研究の目的の一つを実際に確認できたものと考える。さらにマイクロ空間に閉じ込められたレジオネラの蛍光特性の取得を行った。この結果,レジオネラはマイクロ空間への閉じ込めに加えて,紫外光の照射をトリガーとして蛍光物質の産生を開始すると言う新しい知見を得た。この事実は,これまでの蛍光波長に加えて時間依存性を細菌識別のパラメータにできることを示している。現在,この蛍光物質の分析を進めており,外部刺激に対するストレス耐性物質である可能性を見出している。このような,マイクロ流路を用いた新たな細菌の性質の発見は,本研究のもう一つの目的である,エレクトロニクスに基づく細菌行動学の創生にも資するものであると考える。
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