研究課題/領域番号 |
23560398
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
大観 光徳 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90243378)
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研究分担者 |
市野 邦男 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90263483)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流 |
研究概要 |
当初の計画に従い、固相焼成法により作製したSrGa2S4:Eu蛍光体粉末を分粒して粒径0.1-1 μmの微粒子蛍光体試料を得た。これをアルコール溶媒に分散し、スピンコーティング法やスプレーコーティング法によりガラス基板上に塗布した。走査型電子顕微鏡で塗布状態を確認した結果、いずれの方法でも目標としていた一様かつ緻密に充填された蛍光体膜は得られていないことが分かった。また、膜厚も厳密に制御することが出来なかった。微粒子蛍光体の粒径やコーティング条件を変えて実験したが、改善は見られなかった。 そこで、急遽、インクジェット・プリントによる成膜を行うこととし、当初の計画では設備備品としてステンレス製グローブボックスを購入する予定であったが、それに代わりパルスインクジェット・プリンタを購入した。同プリンタを用いて成膜を試みたところ、分散溶媒の粘性や射出量、射出ピッチ等の条件を調整することにより、緻密かつ一様な蛍光体膜を作製でき、さらに印刷回数により膜厚も制御することが可能となった。また、同プリンターを用いて、EL素子の絶縁層薄膜や電極の作製も可能となり、いずれもフォトリソグラフィー等のパターニングが必要ないので、本研究の目標の一つである全ての工程を印刷法で行う目途が得られた。 パルスインクジェットプリンタを用いてEL素子を作製したところ、現時点で約20cd/m2(駆動周波数1kHz)が得られている。これまでのスピンコーティング法やスプレーコーティング法では、作製条件とEL特性の相関がなく、再現性が乏しかった。しかし、今回導入したパルスインクジェット・プリンタでは、上記のとおり制御性よく蛍光体膜を作製できるので、良好な再現性が得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に掲げた「(1)高い発光効率を有する微粒子蛍光体の材料探索ならびに作製技術の確立」、「(2)微粒子蛍光体の印刷技術の確立」のうち、(2)についてはパルスインクジェット・プリンタを導入することで、ほぼ目標を達成できた。(1)については、緑色材料としてSrGa2S4:Euは検討したものの、青色・赤色材料は未実施であり、24年度以降の課題として残る。全体としては、おおむね予定どおりに目標を達成できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
23年度に未実施であった赤色・青色微粒子蛍光体の探索ならびに作製を行う。また、これら蛍光体は硫化物であり、化学的に不安定で劣化しやすいので、その対策として溶液合成法により微粒子蛍光体のまわりに保護層を形成する。その効果については、研究代表者が所有する恒温・恒湿槽を用いた加速劣化試験、ならびにEL素子の寿命試験を行うことにより確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
「研究実績の概要」で説明したように、設備備品を変更したため、次年度使用の研究費が生じた。それを含めた次年度の研究費の使用として、微粒子蛍光体の原材料費やEL素子を構成するガラス基板等の部材、パルスインクジェット・プリンタのノズルなどの部品購入を予定している。さらに国際会議(12月・香港)での発表を計画しており、その旅費にも充てる予定である。
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