研究課題/領域番号 |
23560398
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
大観 光徳 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90243378)
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研究分担者 |
市野 邦男 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90263483)
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
前年度の設備品として購入したインクジェットプリンタを用い、高密度かつ均一に微粒子蛍光体を印刷できる印刷条件を検討した。パルスショットの位置をずらしながら印刷を繰り返すことで、上記の目的に適う薄膜を得た。その薄膜を用いてEL素子を作製し、現時点で1kHzパルス波駆動下において最大輝度約40cd/m2を得ている。 しかし蛍光体の微粒子径が大き過ぎるため、インク溶媒中の分散状態を保持できず、印刷中に沈降が生じた。これまでは蛍光体粉末をボールミリングすることで微粒子蛍光体を作製してきたが、粒子を細かくするために今以上に強いミリング行うと発光効率が低下していしまう。この問題を解決させるため、当初の計画を変更し、水熱合成法によるナノ粒子蛍光体の作製を行うこととした。水熱合成に必要な設備として、オートクレーブ(商品名:ポータブルリアクタ)を購入した。 まずは比較的単純な組成式で構成されるZnS:Mnの水熱合成を検討した。原料としてZn(CH3COO)2・2H2O、Mn(CH3COO)2・4H2O、チオ尿素NH2CSNH2を用い、これらの混合液にアンモニア水を加えることによりpH値を調整した。この混合液をオートクレーブ中にて200~240℃、2時間加熱することにより水熱合成を行った。合成後、遠心分離により沈殿物の回収し、80℃で乾燥させることで微粒子蛍光体試料を得た。水熱合成時の温度ならびにpH値を調整することにより、20 nm ~ 5 μmの範囲でZnS:Mn微粒子の粒径を制御することに成功した。またいずれの試料からもMn2+の3d-3d遷移に起因する黄橙色の発光を確認した。しかし発光強度はまだ十分でなく、今後、合成条件の検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画に掲げた微粒子蛍光体の印刷技術の確立については、緻密かつ均一な蛍光体膜の作製できる印刷条件を見出し、ほぼ目的を達成できた。しかし、インク中に長時間、安定に分散する微粒子蛍光体が必要となり、水熱法による合成を試みた。ナノ粒子蛍光体の粒径をある程度制御出来るようになったが、高い発光効率はまだ達成できていない。
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今後の研究の推進方策 |
発光効率が低い原因として、発光中心のMnがZnS中に十分取り込まれていないためと考えられる。そのためには厳密なpH調整が必要であり、今後はマイクロリアクタ法(装置は鳥取大学に既存)により原料溶液の混合を行う予定である。また、合成した微粒子蛍光体の一次粒子は数十μmと小さいが、電子顕微鏡の観察で粒子どおしの凝集が見られるので、適切な界面活性剤を用いて凝集の抑制を試みる。更に微粒子蛍光体のまわりに保護層の形成を行い、EL素子特性の安定化を図る。ZnS:Mn以外の蛍光体の作製も並行して進め、本研究の目標である赤・緑・青色画素を有するEL素子の作製を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
前述のとおり、当初の計画を変更して、水熱法による微粒子蛍光体の作製を行うこととしたため、オートクレーブ装置の導入と立ち上げに時間を要した。そのため、EL素子の作製を計画どおりに進められず、請求額どおりの予算執行が出来なかった。次年度は、水熱合成による微粒子蛍光体、ならびにEL素子を作製を並行して進め、繰り越し分の予算をその費用に充てる。具体的には、微粒子蛍光体の原料費やEL素子を作製する上で必要なガラス基板等の部材、パルスインクジェットプリンタやオートクレーブの部品購入などを予定している。また、国際会議(8月・韓国、招待講演)での発表が決まっており、その旅費にも充てる予定である。
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