研究課題/領域番号 |
23560402
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
竹澤 昌晃 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20312671)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 電子デバイス・電子機器 / 磁区観察 / Kerr効果 / 熱アシスト磁化反転 |
研究概要 |
平成23年度は、磁区観察に用いるKerr効果顕微鏡の光源波長を可視光である546 nmから紫外光である248 nmまで変化させることで、光源波長と磁区観察の空間分解能の関係について調べた。観察試料には、ナノメートル寸法の微細な磁区構造が得られるHDDRプロセスによって作成されたNd-Fe-B系微細結晶粒磁石を用いた。その結果、248 nmあるいは365 nm波長光を用いることで、100 nmを切る優れた磁区観察の空間分解能が得られることを明らかにした。また、観察像の撮影に用いるカメラとして、高感度・高SN比である裏面照射CMOSカメラを用いることで、従来より高コントラスト・低ノイズの磁区像が得られることが分かった。動磁区観察については、システム構築のための予備実験として磁性アモルファスリボンにより構成したトロイダルコアの動磁区観察を行った。カメラの高速シャッタ制御によるストロボ法を用いて、シャッタ速度100 ns、6 kHz励磁の際の動磁区観察を実現できた。これより、高速動磁区観察システム構築のためのシャッタ速度と励磁周波数の関係に関する知見を得ることができた。さらに、磁区観察時の磁性体の温度制御を目的として、温度制御ステージをKerr効果顕微鏡に組み込んだ。この観察システムにより、Nd-Fe-B系磁石の温度を室温から300℃まで変化させた状態での磁区観察を実現できた。また、高温観察時の保護膜としてTaスパッタ膜が有効であることも明らかにできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、当初の目的であった顕微鏡の光源波長の低減による磁区観察の高分解能化、動磁区観察のための基本的システムの構築、さらに観察試料の温度制御下での磁区観察を実現でき、研究の目的はおおむね順調に進展していると言える。ただし、磁性材料の高速磁化反転用の平面コプレーナ線路の観察システムへの組み込みには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に構築した高空間分解能・高速動磁区観察システムを用いて、様々な種類・寸法・形状の微細磁性ドットの磁化過程の様子を観察することで磁化反転速度の雰囲気温度依存性に加えて、磁区構造の寸法依存性を調べデバイス応用の際の最適な材料構成を把握する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、様々な種類・寸法・形状の微細磁性ドットを作成するため、スパッタ装置で用いる基板、Arおよび窒素ガス,スパッタリングターゲット、洗浄用薬品などを購入する。また微細加工で用いる電子ビーム露光装置のフィラメントや、バルク試料を観察する際の研磨用ダイヤモンドペースト、研磨バフなどを購入する。また、国内および国際会議で成果発表を行うための旅費にも使用する。
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