研究課題/領域番号 |
23560402
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
竹澤 昌晃 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20312671)
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キーワード | 磁区観察 / 磁区構造 / 磁気Kerr効果 / ハード磁性材料 / 磁化反転 / 磁化過程 / 磁気異方性 |
研究概要 |
平成24年度は、前年度に構築した高空間分解能・高速動磁区観察システムを20 kOeまでの高磁界印加可能な電磁石内に組み込むことにより、高磁界中・高温中での高異方性材料の磁化過程の磁区観察が可能な観察システムを実現した。 高異方性材料として、約80 kOeの異方性磁界を有するにもかかわらず、その保磁力が10 kOe程度しかないNd-Fe-B系磁石をサンプルとして磁区観察した。様々な種類・寸法・形状のNd-Fe-B系磁石の高温・高磁界下での磁化過程の様子を磁区観察することで、磁化反転特性の雰囲気温度依存性に加えて、磁区構造の寸法依存性を調べた。 その結果、磁性材料の磁化反転に要する磁界は、その反転磁区の面積と大きな依存性があることを明らかにした。このことは、磁性材料の磁気特性を制御するためには従来より知られる結晶粒径を制御するだけでなく、結晶粒間の磁気的結合の強さをも制御する必要があるということを示唆する結果であり、粒界組成の制御など新たな磁気特性制御法が有効なものと期待される。 さらに重要なことは、雰囲気温度によって反転磁区面積が変化した結果も得られたことである。これは、結晶粒間の磁気的結合の強度が温度によって変化したためだと考えられるが、このことは熱アシスト磁化反転では磁界のみによる磁化反転と磁化反転過程における磁区構造変化が異なる可能性があることを示唆するものであり、実デバイスでの磁化反転特性を考える上で大変に重要な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、当初の目的であった磁気異方性、寸法、形状が異なる種々のハード磁性材料の磁化反転過程について、その雰囲気温度依存性も含めて磁区観察により明らかにすることができ、研究の目的はおおむね順調に進展していると言える。ただし、キロエルステッドオーダーの高磁界励磁下での高速動磁区観察においては鮮明な磁区像を得るには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、平成24年度に引き続き高空間分解能・高速動磁区観察システムを用いて、様々な種類・寸法・形状の微細磁性ドットの磁化過程の様子を観察することで磁化反転速度の雰囲気温度依存性に加えて、磁区構造の寸法依存性を調べデバイス応用の際の最適な材料構成を把握する。さらに、高磁界下における動磁区観察により、その磁化反転原理を明らかにすることを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、様々な種類・寸法・形状の微細磁性ドットを作成するため、スパッタ装置で用いる基板、Arおよび窒素ガス,スパッタリングターゲット、洗浄用薬品などを購入する。また微細加工で用いる電子ビーム露光装置のフィラメントや、バルク試料を観察する際の研磨用ダイヤモンドペースト、研磨バフなどを購入する。また、国内および国際会議で成果発表を行うための旅費にも使用する。
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