研究課題/領域番号 |
23560408
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
古田 守 高知工科大学, ナノテクノロジー研究所, 教授 (20412439)
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研究分担者 |
浦岡 行治 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (20314536)
木村 睦 龍谷大学, 理工学部, 教授 (60368032)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 先端機能デバイス / 電子・電気材料 / 半導体物性 / イメージセンサ / 酸化物半導体 / 薄膜トランジスタ / デバイスシミュレーション |
研究概要 |
平成23年度は、酸化亜鉛薄膜トランジスタ(ZnO TFT)をモチーフデバイスとし、可視光照射時の光リーク電流と欠陥準位密度の関連、光リーク電流を再現可能なデバイスシミュレーションモデルの構築に関する研究を実施した。1) ZnO TFTの欠陥密度低減・不活性化制御手法の研究とそれを通じた欠陥の密度やエネルギー分布と光電流の関連明確化に関して、ZnO薄膜形成時の酸素分圧を変化させたトランジスタにより、酸化物半導体特性に極めて大きな影響を与える酸素欠損(欠陥準位密度)と光リーク電流を評価した。この結果、ZnO製膜時の酸素分圧の減少に伴い伝導帯下端から0.5eV近傍にドナー型欠陥が、また2.7~3.0eVに電子トラップが形成されることを明らかにした。これらのうち、光照射により伝導帯下端2.7~3.0 eVに形成された電子トラップからの電子放出が光リーク電流と強く相関していることを明らにし、次年度に向けた重要な研究指針が得られた。2)光リーク電流を再現可能なシミュレーションモデルの構築に関して、トランジスタ上に形成した微小スリットでチャネル領域の特定場所に光照射を行い、光リーク電流の照射位置依存性をモデル化できる独自の取り組みを行った。光キャリアの正孔がソース近傍に蓄積されソース電極の電子注入障壁を低減することで光リーク電流が増大することを実験とシミュレーションの両面から明らかにした。デバイスシミュレーションモデルは次年度以降の光電流を低減するデバイスモデル構築に重要な役割を果たすものである。3)低ダメージ原子層堆積による酸化亜鉛薄膜トランジスタの研究に関して、酸化度を原子層レベルで制御可能なALD法を用いたZnO TFTプロセスを開発した。本研究成果は、次年度以降にスパッタ製膜した酸化亜鉛トランジスタと光リーク電流ならびに欠陥準位密度の比較研究に発展させる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度目標は、「酸化亜鉛薄膜トランジスタ(ZnO TFT)をモチーフデバイスとし、ZnO TFTの欠陥密度低減・不活性化制御手法の研究とそれを通じた欠陥の密度やエネルギー分布と光電流の関連を明らかにする。また抽出した欠陥密度とエネルギー分布を用い、光リーク電流を再現可能なデバイスシミュレーションモデルを構築する」であった。この目標に対し、ZnO製膜時の酸素分圧がTFTの欠陥密度ならびに光リーク電流に与える影響を実験的に検証し、価電子帯近傍に形成される電子トラップが光リーク電流に大きく影響し、電子トラップの密度はZnO製膜時の酸素分圧により制御可能なことを明らかにした。また、デバイスシミュレーションにより光キャリアの輸送機構に関しても検討を行い、光リーク電流を再現可能なモデルを確立した。これら研究は当初計画通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は計画通り進捗しており、平成24年度は当初計画通り、平成23年度の結果を発展させ、透明トランジスタに向けた新しいデバイス構造提案とその実証を行う。これに加え、低ダメージ製膜手法として溶液を用いた大気圧CVDといった新たな試みも取り入れて更なる研究加速を図る計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当無し
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