研究課題/領域番号 |
23560409
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
礒田 隆聡 北九州市立大学, 国際環境工学部, 准教授 (70284544)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | DNA / m-RNA / c-DNA / タンパク / 相互作用 / 電子回路 |
研究概要 |
本研究ではDNAから遺伝子(塩基配列コード)が正確にコピーされる分子生物学機構を利用して、電子回路中に集積化したDNAが塩基配列の違いで特定の遺伝子を認識する相互作用を、電圧のON/OFFに置き換えて情報処理を行う有機体/物理デバイスの基本原理を開発する。そのため以下の2点について基盤研究開発を行うことを目標としている。(1) 電子回路中に様々な塩基配列のc-DNA(タンパク生産の塩基配列コードを持つm-RNAからコピーしたDNA)を集積化する方法の確立を第1目標とする。(2) c-DNAは1塩基の違いで特定のm-RNAを認識する。最終目標として、m-RNAとc-DNAの認識を入力信号として出力信号パターンを直接演算する素子の基本原理を開発する。 本年度は(1)の基盤技術を確立するため、まず基板表面のモデルとしてシリカ微粒子(10μmφ)を選定し、この表面にDNAを取り付けるための官能基構築の基礎データの収集を実施した。まずシリカ表面には水酸基が存在しているため、アミノシラン化合物を脱水縮合反応させてアミノ基を導入した。この表面にDNAを構成する塩基の中で、アデニン(A)、シトシン(C)、ならびにグアニン(G)のみを連結させた合成DNA(Poly-A、-C、ならびに-G)を、アミノ基と水素結合で連結させた。このDNA鎖に、さらにアクリジンオレンジ誘導体を用いて標識化させ、シリカ表面のDNA導入量を調査した。 通常固体表面への有機分子の導入は、化学反応で分子を共有結合させることが必須である。本研究では固体表面に導入したアミノ基がDNA類と強く相互作用するため、塩基配列にダメージを与えることなく容易に結合することが明らかになった。 さらに抗体のようなタンパク分子も同じように表面に導入でき、この固定化した抗体と抗原タンパクが特異的に反応することも確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機能性分子の自己配列のために、固体表面にアミノ基を導入することで、DNA断片であるPoly-A、-C、-Gを水素結合で導入できる目処が立った。これは基板表面をアミノ基でパターニングすることで、溶液中に含まれるDNA断片を、基板平面に滴下するだけで、自立的に平面の任意の位置に固定化できることを示唆している。さらに、抗体のようなタンパク分子も水素結合で固定化できる目処が立った。このタンパクを介して、抗原タンパクが特異的に反応しているという副産物の結果も同時に得られた。これは、基板平面の任意の位置に固定化したタンパク分子に、さらに別の分子が連結可能であることを示唆している。これは当初の研究計画では予想しなかったものであり、今後このような手法を積極的に利用して電子回路中でDNA構築のための分子ツールとする目処が立ったため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 電気分解によるAu反応部位表面のアミノ化格子状電極デバイスを作製し、電極上に固定化した機能性アミノ酸(アミノ基側末端が保護基でキャップされているもの)を電気的に任意の位置で保護基を脱離させる方法を確立する。原理としては、デバイス上に電解液を滴下し、任意の電極交差位置を通電させ、負極から発生する水素イオンで保護基が脱離反応する条件を探索する。このような方法で、基板上の任意の位置をアミノ化させ、そこにc-DNA断片を固定化することを試みる。(2) 当該年度購入した固相合成装置で、あらかじめアミノ酸を任意に連結させたペプチドを合成し、このカルボシル基末端を(1)の露出したアミノ基とペプチド結合させることを試みる。近年、分子生物学分野では、特定のアミノ酸配列のペプチド分子と、c-DNAが特異的に相互作用することが明らかになってきている。そこで、本デバイス上にも化学物質であるペプチドを予め任意の位置に配列させておくことで、c-DNAの塩基配列にダメージを与えることなく、自己配列できることが期待される。(3) 格子状電極デバイスの作製当学研都市内の半導体共同開発センター内保有のマスクアライナー露光装置、及びレーザー描画装置を用いる。この研究ステージでは、ガラス基板上にフォトリソグラフィー法にてセンサ回路を構築する。第1層目をCr電極、第2層目をSiO2絶縁層、第3層目をCr電極となるように積層させ、格子状電極群を作製する。機能性分子の配置部には、Au層をパターニングして反応部位を構築する。電極線幅を100μmから10μmへと段階的にダウンサイジングさせることで、c-DNA素子の集積化度を上げていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度で備品購入をしたため、次年度はこれを活用しながら試薬関係の消耗品の購入を行い研究を実施する予定である。
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