研究課題/領域番号 |
23560412
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
下村 和彦 上智大学, 理工学部, 教授 (90222041)
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キーワード | 量子ドット / 広帯域光通信 / 光デバイス / 有機金属気相成長 / アレイ導波路 |
研究概要 |
通信トラフィック量の増加に対応すべく大容量光通信システムの通信波長帯域は従来のS,C.Lバンドを超えてさらに拡大することが予想される。本研究はこの広帯域光通信システムに適用可能な数100nm波長帯域で動作する光デバイスを量子ドットアレイ導波路を用いて実現すること、また量子ドット構造の基本的物性値を測定し、光デバイス設計のための知見を得ることを目的とした研究である。 量子ドットアレイ導波路は有機金属気相成長法による選択成長を用いたS-K量子ドットのバンド端制御、ダブルキャップ法による量子ドット高さ制御、バッファ層組成変化による歪制御を用いて作製する。広帯域LEDにおいて広帯域動作をするためには、アレイ導波路ごとにまた多層構造において層ごとに発光波長を大きく変化させる構造が必要である。これまで作製した多層構造では短波長側の発光強度が弱く、設計通りの発光半値幅が得られない問題があった。本年度は中心波長を長波長側にずらした設計を行うことによって、発光半値幅500nm超、さらにフラットトップのスペクトル形状を得ることに成功した。この成果は応用物理学会の速報論文として公表され、さらに次年度以降の国際会議にて発表予定である。 またこの量子ドットアレイ導波路を波長スイッチに応用するために、量子ドットアレイ導波路内の電気光学効果として、電界印加および電流注入に伴う屈折率変化量、吸収変化量をファブリ・ペロ―エタロン法による測定を継続して行っている。量子ドットアレイ導波路のバンド端波長に対して入射光波長を変化し、広い波長帯域におけるこれらの変化量を測定し、広帯域動作可能な光スイッチ・波長スイッチへの応用を検討している段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非対称マスクを用いた選択成長を用いてS-K成長モードにより量子ドットを成長した。そして量子ドット高さはダブルキャップ法の第一キャップ層の成長時間を変えることによって制御し、またバッファ層の組成を変化することによって量子ドットの発光波長を制御した。研究実績の概要で述べたとおり、量子ドットアレイ導波路を用いたLED素子は、当初の研究計画通り、500nm超の発光帯域を得ることができた。さらに各層からの発光強度が等しくなることによってフラットトップのスペクトル形状を得ることができたことは非常に大きな進展となった。この成果は中心波長を長波長側にずらすことによって得られたものであるが、逆に言うと短波長側の発光強度を増大させることができれば、さらに発光波長帯域を広くすることが可能である。短波長側の発光を得るためには、量子ドット層直下のバッファ層のGa組成を変更して対処してきた。これまでの実験結果よりGa組成が0.47±0.1を超えると発光効率が大幅に減少することを実験的に確認している。そこでGa組成が0.47±0.1を超えても発光効率が低下しないバッファ層の成長条件を最適化する実験を行ってきたが、依然として発光強度が低下しない成長条件を把握していない状況である。 一方、量子井戸構造を用いたアレイ導波路型波長選択スイッチにおいては、熱光学効果素子におけるスイッチング動作の低消費電力化の検討、電流注入型素子ではスイッチング動作の確認、電界印加型素子においては、実際に作製した量子井戸層を元に量子閉じ込めシュタルク効果による各アレイ導波路の動作波長における屈折率変化量を理論的に計算し、スイッチング動作の可能性について検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に引き続いて、量子ドットアレイ導波路の成長条件に関する研究を行うとともに、広帯域LED、光増幅器を実現するための多層構造の設計、および光増幅器内の非線形光学定数の測定、また量子ドットアレイ導波路に電流注入あるいは電界印加したときの屈折率変化の測定を行い、波長スイッチ設計のための基本的パラメータを把握する。 広帯域発光を可能とする量子ドット成長条件については、短波長側の発光強度を増加するための成長条件の把握に集中し、その成長条件を採り入れた4層構造の量子ドットアレイ導波路型LEDの試作を行う。アレイ導波路型のLEDの場合、アレイ導波路からの広帯域発光をまとめて出力するためにはローランド円構造を持つスラブ導波路によって集光することが必要となるので、発光帯域に応じたスラブ導波路の設計を引き続き行う。またこれまで作製した3層量子ドットアレイ導波路を用いて、光増幅器の試作を行い、アレイ導波路ごとの利得特性、波長特性、応答速度、飽和特性について測定を行い、広帯域光増幅の可能性を検討する。 波長選択スイッチにおいては、量子ドットアレイ導波路設計に必要な屈折率変化、吸収変化の測定を引き続き行い、そしてこれらの知見を元に熱光学効果型、電流注入型、電界印加型において波長分波とスイッチング動作を達成し、それぞれの消費電力、スイッチング速度、消光比、挿入損失を比較検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は量子ドットアレイ導波路の作製が元となっており、これは現有する有機金属気相成長装置を用いて行っているが、これに関連した研究費の使用が主となる予定である。具体的には、有機金属気相成長装置のメンテナンスとしてロータリーポンプのオーバーホール、成長材料としての有機V族材料の購入、そして成長基板の購入である。また光デバイス設計のためのマスク作製費、光デバイス測定用の光学部品の購入も検討している。
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