研究課題/領域番号 |
23560415
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
柴山 純 法政大学, 理工学部, 准教授 (40318605)
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キーワード | FDTD法 / LOD-FDTD法 / 周波数依存性媒質 / プラズモニクス / 光導波路 |
研究概要 |
本研究の目的は、3次元(3D)の微小プラズモン導波路デバイスを極めて高速に解析できる、局所的一次元(LOD)法に基づく陰的な有限差分時間領域(FDTD)法を開発することである。また、本手法を用いて種々の3Dプラズモン導波路デバイスを解析し、所望のフィルタ特性、共振器特性を得るための構造を見出すことである。 前年度までに3D-LOD-FDTDを確立し、3Dプラズモンデバイスの計算時間が半分以下に抑えられた。これに加え、本年度は本手法の実装を極めて効率よく行える技法を導入した。Fundamental法と呼ばれるこの技法を用いると、計算が等価であるにも拘わらず、計算式の右辺に微分項を含まない定式化が可能である。Fundamental法を導入した3D-LOD-FDTDでは導入しない場合に比べて3割以上の計算時間の削減が可能になった。この成果を、IET Electronics Lettersで公表した。また、Fundamental法を回転対称構造解析用LOD-BOR-FDTDにも導入しIEEE Photonics Technology Lettersで成果を公表した。さらに、LOD-BOR-FDTDをプラズモン導波路解析用とするため周波数依存型に拡張し、電子情報通信学会総合大会で発表した。 開発した3D-LOD-FDTDを用いて、プラズモングレーティングを解析した。その結果、2次元(2D)問題に比べ反射スペクトルの帯域幅が狭くなり、反射係数も小さくなった。これは、3D構造としたことにより界の漏れが生じ、グレーティングの効果が減じられたためである。プラズモン導波路の理論検討は2D問題のもほがほとんどであるが、3D解析を行わなければ正確な特性評価が出来ないことを明らかにした。この結果を電子情報通信学会総合大会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までに3D-LOD-FDTDが完成していたが、Fundamental法の導入によりプログラミングの簡素化と、さらなる計算効率の向上が可能になった。また、Funamental法を用いた回転対称構造解析用のLOD-BOR-FDTDも開発し、円筒構造のプラズモン導波路が効率よく解析できるようになった。これらは、当初の研究計画に含まれていなかったが、効率よい計算手法として効果が大きく、新たな展開となった。 他方、実際の3Dデバイス解析では、グレーティングと共に共振器の特性解析と設計を終えるはずであったがこれは達成出来なかった。しかしながら、グレーティング解析では3D構造と2D構造で特性が大きく異なり、正確な特性評価には3D解析が必要不可欠であると警鐘を鳴らすことが出来た。また、この差異の原因を調べるために、3Dグレーティングの伝搬界や、断面構造の固有モード解析を行った。その際、金属の厚みを増し、厚みが無限大と仮定した2D構造に近づけた場合も詳細に検討した。その結果、金属が厚い構造でも伝搬界の多くが空気領域に漏れ出し、グレーティングの効果が限定的になっていることを見出した。これまで、プラズモンデバイスの理論検討の多くは2D解析で行われており、様々な機能デバイスが提案されている。しかしながら、2Dで得られた結果が、実際の3D構造で得られるかどうかは疑問であり、研究の見直しが必要であると考えられる。 以上のように、3Dデバイス解析では特性解析と設計が未達であった。しかし、2Dデバイスと3Dデバイスで結果が予想以上に異なり、3D解析が極めて重要になる点、また、Fundamental法を導入した数値解析手法に関する新たな展開が進んだ点を考慮に入れ、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
3Dプラズモンデバイスの設計を行う。2D構造での結果と比較しながら、グレーティングフィルタの阻止帯域の確保、サイドローブの低減を行う。前者に対しては、グレーティングの周期数、グレーティングの深さなどに注意しながら、適切な構造を見出していく。後者に対しては、アポダイゼーションやチャープをグレーティングに導入し効果を確認する。 さらに、グレーティングの中心に欠陥を導入し共振器を構成する。コア幅を変化させることでどの程度共振波長のチューニングが行えるか調査する。その際、共振のQ値の変動にも注意を払う。 プラズモン導波路とシリコン導波路などの誘電体導波路との接続問題にも取りかかる。2D問題で効果のある導波路接続構造が3D問題でも有効かどうか調査する。 得られた成果は、電子情報通信学会のソサイエティー大会、全国大会、研究会、国際会議等で発表する。論文誌への投稿も行い、積極的な成果の公表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
成果発表を積極的に行うため、学会発表のための予算を計上している。研究に協力した大学院生と共に参加するための予算も含まれる。論文投稿料に加え、協力者への謝金も計上している。
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