本研究課題の目的は、3次元(3D)の微小プラズモン導波路デバイスを極めて高速に解析できる局所的一次元(LOD)法に基づく陰的な周波数依存型有限差分時間領域(FDTD)法を開発することである。前年度までに、Fundamental法に基づく効率よい3D-LOD-FDTD法を開発したので、今年度はデバイス解析を精力的に行った。特に、ギャップ導波路で構成された3次元構造のグレーティングフィルタの反射特性を、2次元構造の結果と詳細に比較した。その結果、2次元構造で得られる広い反射帯域が、典型的な3次元構造では得られないことがわかった。これは、2次元構造では光波がフィルタ内に完全に閉じこめられグレーティングの効果が顕著である一方、3次元構造では光波がギャップの外の空気領域に漏れグレーティングの効果が限定的になるためであることを突き止めた。ギャップ幅50nmの典型的な3次元構造で、2次元構造と同等の特性を得るためには、金属膜を2.5um(ギャップ幅の50倍)以上の厚みに選ぶ必要のあることがわかった。これまで、ギャップ導波路を利用した多くの機能デバイスが提案されているが、それらのほとんどは2次元構造であり、実用的なサイズを有する3次元構造では2次元構造の特性の再現が困難であることが予想される。これらの成果を、電子情報通信学会の総合・ソサエティ大会、研究会で報告した。現在、論文執筆準備中である。 デバイス解析と平行して、新たな数値解析手法の開発も行った。Fundamental法に基づく周波数依存型LOD-FDTD法を、多極のDebye媒質を解析できるように拡張し、IEEE Photonics Technology Letters(PTL)で採録された。さらに、Fundamental法を回転対構造(BOR)用周波数依存型FDTD法にも導入した(IEICE Tran. Electronに採録)。
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