本研究は大規模施設等やアクティブ消音装置で用いられる大電力スピーカシステムの電力効率の大幅な改善,消費電力の削減を目的とする.このためデジタル信号直接駆動型技術DDDSPを応用し,その特性を大幅に改善する方法を研究する.この方式ではアクチュエータ(ACT)数を増加させることで出力電力(音圧)の増大を図り,小振幅出力時に使用するACT数を減らすことで効率の向上を実現する.ACTを選択駆動するミスマッチシェーパーの高性能化や3状態駆動方式の検討,駆動信号の高精度化等を行い,最大信号から小信号まで80%以上の効率を有し,100dB以上の高SNRかつ100~1KWの大電力システム駆動回路の実現を目指す. 本年度は,平成24年度の検討をベースに,1kW級の大電力化を目指し450W出力のプロトタイプを設計,試作した.24年度の検討からスピーカ数の増大が大電力化に有効であるため,スピーカ数を16とした.また,ドライバ回路の高電圧化に対応させ,さらなる大電力化を実現した.これによりコンパクトな回路基板でありながら大出力を実現している.SNRの向上を図るため,開発した2次NSDEMを用いて雑音電力を低減させている. また,大電力に耐えうるスピーカを採用した場合,並列配置したスピーカは狭指向特性を示す.指向特性を広範囲に制御しこの問題を解決するため, DDDSPを用いた位相および振幅制御可能なシステムを検討し,その効果をシミュレーションにより確認した.この方式は,すべてデジタル処理で実現しており,提案する大電力スピーカシステムに容易に組み込むことが可能である. さらに,大電力化を図った場合にはスイッチングにより生じる不要帯域輻射が問題となる可能性があるため,スピーカをスイッチングするタイミングを動的に可変する方法の検討を行った.この方式では,タイミング変化によって生じる雑音をデジタルフィードバックし帯域外輻射を抑えかつSNRの劣化防止を実現している.
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