研究課題/領域番号 |
23560420
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
中條 渉 名城大学, 理工学部, 教授 (40292289)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | マイクロ波 / ミリ波 / テラヘルツ |
研究概要 |
本研究では,複数のビート光を用いて300 GHz以上のテラヘルツ帯で高出力の連続波を発生するテラヘルツ帯連続波電力合成技術の開発を目指している。半導体レーザの波長を制御して個々のテラヘルツ帯連続波を独立に位相制御する技術が実現すれば,広い帯域にわたってテラヘルツ波の高出力化ができるだけでなく,テラヘルツ波光源のアレーとして位相制御することで、テラヘルツ波のビーム走査を行うことが可能となる。2011年度は,半導体レーザの波長制御と光ファイバのファイバ分散を用いた空間電力合成技術を実証するため,1 GHz~40 GHzのマイクロ波・ミリ波帯電力合成技術の開発と性能評価を実施した。先ず半導体レーザの温度と電流を制御することで,マイクロ波の位相を0.3度,振幅を0.1dBの精度で制御できることを示した。次に光ファイバ毎に光変調器を有する2素子および3素子の光制御アレーを用いて,個々のフォトダイオードで得られた1 GHz~40 GHzのマイクロ波・ミリ波信号の位相を正確に測定し, 0~360度の広範囲にわたり高精度にマイクロ波・ミリ波信号の位相合成が実現できることを明らかにした。半導体レーザの波長を微調整することで光制御アレーのオフセット位相差を取り除くキャリブレーション手法を用いた。さらに応用として2素子光制御アレーを用いて,地上ディジタル放送波の受信信号の位相合成を同相と逆相で実現し,高精度に位相制御できることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
温度により波長を微調整できる半導体レーザとミリ波帯の応答特性を有するフォトダイオードを整備し,光ファイバ毎に光変調器を有する複数の光ファイバ構成を用いて,マイクロ波・ミリ波の電力合成技術の実証実験を行った。1GHz~40 GHzの同一信号源からのコヒーレントなマイクロ波・ミリ波信号で変調された複数の半導体レーザ光を単一モード光ファイバに通し,そのファイバ分散によって遅延時間を制御しフォトダイオードで検出することで,遅延時間が制御されたマイクロ波・ミリ波連続信号を得た。 また半導体レーザの波長を個別に微調整することで,ファイバ長のばらつきやその他の外部環境要因によって生じる遅延誤差を補正した。フォトダイオードで得られた複数のマイクロ波・ミリ波連続信号の振幅と位相を個々に評価することで,提案する電力合成技術の性能を1GHz~40 GHzで評価した。複数の光ファイバを用いた構成でマイクロ波・ミリ波の位相合成を実現する技術について,得られた成果を学術論文にとりまとめて投稿し,IEICE Trans. Electron.に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
2011年度に得られた光ファイバ毎に光変調器を用いた複数の光ファイバ構成のマイクロ波・ミリ波の電力合成実験結果を基にして,2012年度は複数の半導体レーザと複数の光ファイバを用いて,ビート光として得られたマイクロ波・ミリ波の電力合成技術の開発を行う。異なる波長の半導体レーザ2個と単一モード光ファイバとフォトダイオードを1組として,生成するビート光を電力合成できるように2組以上の実験装置を整備する。必要となる遅延時間の精度は30 GHzで1ピコ秒程度であり,半導体レーザの波長を個別に微調整することで遅延誤差の補正を行う。フォトダイオード出力として得られた個々のマイクロ波・ミリ波連続信号と,個々のマイクロ波・ミリ波出力を空間的に電力合成して受信した信号を比較することで,提案する電力合成技術の性能を評価する。複数の半導体レーザと複数の光ファイバを用いて異なるビート光として得られたマイクロ波・ミリ波の電力合成技術について,得られた成果を取りまとめ,電子情報通信学会ソサイエティ大会および総合大会で成果発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
テラヘルツ帯連続波をビート光により合成できる半導体レーザやフォトダイオードを購入する。空間電力合成を行うためには半導体レーザやフォトダイオードが複数個必要となるが,寿命も考慮し今年度は1~2個購入する。これらを用いて得られる複数のビート光を光ファイバ増幅器により増幅し,光ファイバの波長分散を用いてコヒーレントに位相合成してマイクロ波・ミリ波帯で電力合成実験を行う。さらに周波数変換器やディジタル信号処理回路を購入し,合成されたマイクロ波・ミリ波帯連続波の電力計測を行う。また,GaAs基板等の半導体材料やLiNbO3基板等の電気光学材料を加工してアンテナ等を製作して送受信に利用する予定である。国内旅費については,2012年9月に開催される電子情報通信学会ソサイエティ大会(開催地:富山大学)および2013年3月に開催される電子情報通信学会総合大会(開催地:岐阜大学)での成果発表に充てる。
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