研究課題/領域番号 |
23560423
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
牧野 博之 大阪工業大学, 情報科学部, 准教授 (50454038)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | SRAM / ばらつき / 書き込み / 読み出し / しきい値電圧 |
研究概要 |
2011年度は、研究環境を構築するとともに、ばらつきを考慮したメモリセルの回路シミュレーション方法を確立し、さらに実際にシミュレーションを行うことにより、メモリセルの安定動作に必要な最適電圧条件の基礎データを取得した。 まず、研究環境を構築するために、ハードウエアとしてHP(Hewlett-Packard)社の2台の高性能ワークステーション(Z800/CT)を導入し、さらに設計システムとして、Synopsys社のJapan University Bundleを導入した。これらのハードウエアとソフトウエアの立ち上げを行い、SPICEによる回路シミュレーション環境の構築を完了した。次に、過去の文献調査を行い、その知見に基づいて、ばらつきを考慮したシミュレーションを行うためのSPICEパラメータの設定を行った。パラメータは、UCバークレーから公開されている45nmのものに手を加えて用いることとした。本研究では、様々な電圧条件に対してトランジスタのしきい値電圧を細かく変化させながら、読み出し、書き込みのそれぞれの可否を調査する必要があり、シミュレーション回数が膨大となるため、一度に自動的に多数の結果が得られる環境を整え、シミュレーション回数を大幅に削減した。 開発したこれらの環境を用いてnMOSトランジスタとpMOSトランジスタのしきい値電圧を変動させた回路シミュレーションを実行し、書き込み限界と読み出し限界の曲線を求めた。これを、メモリセルの電源、GND、ワード線の電位を変化させて多数回行い、それぞれのしきい値電圧に対する最適動作条件を明らかにした。最終的にしきい値電圧の絶対値が0.2Vから0.7Vの全ての範囲における最適動作条件を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究環境の構築を予定通り完了し、さらに電圧条件を変動させたメモリセルの書き込み動作および読み出し動作に対するシミュレーションにより、広いしきい値電圧の範囲に対して最適動作条件を予定通り明らかにすることができた。ここまで、研究は予定通り進捗しており、特に問題はない。
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今後の研究の推進方策 |
2012年度も当初の予定通り研究を継続する。まず、2011年度の結果に基づいてオンチップスピードセンサの設計を行い、スピードと最適電圧条件とを関連付けるテーブルを作成する。これによって、チップの仕上がり状況に応じた最適な電圧を決定することが可能となる。続く2013年度は、オンチップ電圧発生器を設計してSRAMに対して最適電圧を出力する機構を構築するとともに、通常の動作条件では動作しなかったSRAMメモリセルが、本機構を働かせることにより動作可能になったことを確認し、研究の目的を達成する。 なお、2011年度は、ワークステーションの値引きと海外出張のとりやめにより、約510千円の予算が余ったため、これを次年度の予算1,820千円に加え、合計2,330千円(うち、直接経費1,910千円)を2012年度に使用する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
直接経費1910千円の使用計画の内訳は以下のとおりである。2012年度の研究に当たっては初年度よりもシミュレーション回数が格段に増大するため、シミュレーション能力の増強が必要であり、このため、設計システムとして引き続きSynopsys社のJapan University Bundle(525千円)を導入するとともに、Windows環境で回路シミュレーションの実行を可能とするためにOrCad PSpice(1,125千円/5ライセンス)を導入する。また、得られた成果については、適宜学会発表を行う予定であり、研究調査と研究発表のための旅費(国内3回程度:260千円/年)を費やす計画である。
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