研究課題/領域番号 |
23560423
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
牧野 博之 大阪工業大学, 情報科学部, 准教授 (50454038)
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キーワード | SRAM / ばらつき / 書き込み / 読み出し / しきい値電圧 |
研究概要 |
2012年度は、回路のスピードと最適電圧条件とを関連付けるテーブルの作成に注力した。前年度はメモリセルに対する最適電圧条件を明らかにしたが、今年度はこれをSRAM回路全体に拡張し、SRAM全体に対する電圧条件を変化させたシミュレーションを繰り返すことで、最適電圧条件を模索した。その結果、しきい値電圧の広い範囲において、動作条件を明らかにすることができた。これに伴い、メモリセル単体よりも動作条件が厳しくなることが判明し、その原因を明らかにした。メモリセル単体に対する研究成果を2012年電気関係学会関西連合大会で発表するとともに、SRAM回路全体に対する研究成果を2013 IEEE IMFEDK(査読付き)に投稿し、採択された(発表は2013年6月の予定)。 これと並行して、スピードセンサの開発を行った。p型MOSFETとn型MOSFETのサイズ比を3種類に変化させたリングオシレータを作成し、トランジスタのしきい値電圧の値を変化させて、回路シミュレーションで発振周波数を観測することにより、動作周波数としきい値電圧との対応を調べた。動作周波数としきい値電圧が完全に1対1対応となる条件を模索したが、他対1対応となる部分が解消できず、スピードセンサ回路としての完成には至らなかった。 本研究では、極めて多数のシミュレーションを実行するために、昨年度に引き続きSynopsys社のJapan University Bundleを導入するとともに、シミュレーション能力を増強するために、サイバーネットシステム社のOrCAD PSiceのライセンス5本セットを導入した。当初は、ハードウエア能力増強のためにワークステーションを導入予定であったが、Windows環境で回路シミュレーションを実行できる方が効果的であると判断し、Windows上で実行可能なOrCAD PSiceを導入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スピードセンサの完成には至らなかったが、完成まであと一息のところまで進捗しており、90%程度の完成度である。これが完成すると回路のスピードと最適電圧条件とを関連付けるテーブルは完成する。また、2012年度はメモリセル単体に対するテーブルの作成のみを予定していたが、SRAM全体回路の設計を前倒しで実施し、SRAM回路全体としての動作条件を明らかにするとともに、メモリセル単体の場合との違いを明確にすることができた。当初予定ではSRAM全体回路の設計は2013年度に予定していたものであり、この点では、得られた知見も含めて十分に前倒しで進捗していると考えられる。また、成果の発表についても、国内学会だけではなく審査付きの国際学会へも採択が決まっており、十分に実施することができている。以上のことから、全体として概ね当初計画通りに進捗していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度も当初の予定通り研究を継続する。まず、オンチップスピードセンサを完成させるために、トランジスタサイズと電源電圧条件を様々に変化させたシミュレーションを行い、動作周波数としきい値電圧が1対1対応となる条件を見出す。スピードセンサを完成させることにより、回路のスピードと最適電圧条件とを関連付けるテーブルを完成させる。さらに、電源回路に関する検討を行い、本方式に最適な電源回路の設計を行う。電源回路が完成したら、SRAM全体回路にこれを組み込んで、本研究が目指す全体回路の設計を完成させる。最後に、テーブルに基づく電源制御によって、従来は動作不可能であったチップが、本方式によって動作可能となることをシミュレーションで実証し、研究を完了させる。 なお、2012年度は、約180千円の予算が余ったため、これを次年度の予算1,300千円に加え、合計1,480千円(うち、直接経費1,180千円)を2013年度に使用する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
2012年度は、Synopsys社の回路シミュレーションパッケージの価格が想定よりも約20千円安かったことに加え、学会の開催地が近隣であったことなどにより学会参加に要する費用が想定よりも約160千円安くなったため、合計約180千円の余りが生じた。これによって、2013年度の直接経費は1,180千円となり、その使用計画の内訳は以下のとおりである。2013年度の研究においても多数の回路シミュレーションを実施する必要があるため、設計システムとして引き続きSynopsys社のJapan UniversityBundle(525千円)を導入するとともに、研究成果のまとめを行うためのパソコン(300千円)を購入する予定である。また、研究に関するデータを格納するために外付けハードディスクなどの媒体(100千円)を購入したいと考えている。さらに、得られた成果については、適宜学会発表を行う予定であり、研究調査と研究発表のための旅費および参加費(国内3回程度:255千円/年)を費やす計画である。
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