研究課題/領域番号 |
23560425
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
林 忠之 仙台高等専門学校, 専攻科, 教授 (80310978)
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キーワード | 走査プローブ顕微鏡 / 走査トンネル顕微鏡 / SQUID顕微鏡 / 超伝導材料・素子 / 磁性材料・素子 |
研究概要 |
SQUID磁気顕微鏡と走査トンネル顕微鏡(STM)とを融合したSTM-SQUID顕微鏡を用いて、磁性材料および超伝導材料の微細磁気特性を測定評価する手段を開発することを目的とし、平成23年度に開発した高温超伝導体を測定可能な冷却ステージを備えた、STM-SQUID磁気顕微鏡を用いて、平成24年度は、液体窒素冷却ステージによる超伝導状態の磁場分布計測と装置改良を行った。 走査精度向上のために、アナログ制御方式のピエゾステージに変更したのち、制御ソフトウエアの改良を検討した。PID制御における電流検出方法を線形方式から対数方式に変更しフィードバックの追従性を向上させた。液体窒素温度近傍において、バイクリスタル基板上のYBCO超伝導薄膜の磁場分布計測を実施し、フィールドクーリングにより発生した磁束トラップの様子を描出することができた。 平成23年度の段階で、ボルテックスのピンニングをより強くし、磁気信号のS/Nを向上させるために、低温超伝導SQUIDをセンサとし、液体ヘリウムで試料を冷却できるSTM-SQUID顕微鏡ヘッドの設計・開発が必須であると判断し、今年度は並行して進めてきた。低温超伝導SQUIDの正常動作の確認、ピエゾステージによる金属のSTMテストを完了した。プローブとSQUIDとの磁束伝達の手法として、ニオブのトランスファーコイルを採用するが、その特性評価と、シミュレーションによって磁束伝達特性の調査を実施した。プローブのアタッチメントの設計・製作が完了しだい、実際に超伝導試料を用いて磁場分布計測を本格化する。 当初立案計画では、磁性薄膜内部の磁化分布測定としてスピン偏極STMの測定環境を確立する予定であったが、以上のように、新たに低温超伝導SQUIDをセンサとした、液体ヘリウム冷却のSTM-SQUID顕微鏡ヘッドの開発を促進させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
液体窒素冷却ステージを備えたSTM-SQUID顕微鏡の走査精度の改良を実施し、超伝導線材や超伝導薄膜の比較的広範囲な磁場分布計測装置として機能を確立することに至った。ボルテックス観察の目標を達成するための課題として、ボルテックスのピンニングをより強くし、磁気信号のS/Nを向上させるために、当初計画にはなかった、低温超伝導SQUIDをセンサとし、液体ヘリウムで試料を冷却できるSTM-SQUID顕微鏡ヘッドの設計・開発を短期間で進めてきた。低温超伝導SQUIDの正常動作の確認、ピエゾステージによる金属のSTMテストを完了し、プローブのアタッチメントの設計・製作が完了しだい、実際に超伝導試料を用いて磁場分布計測を本格化できるまでに至った。 当初立案計画では、現フェーズにおいて、磁性薄膜内部の磁化分布測定としてスピン偏極STMの測定環境を確立する予定であったが、液体ヘリウム冷却のSTM-SQUID顕微鏡ヘッドの開発を優先させた。総合的にはおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
液体窒素冷却ステージを有するSTM-SQUID顕微鏡では、超伝導線材と薄膜の広範囲の磁場分布測定に特化し、さらなる問題点抽出を経て、性能改善を図る。 液体ヘリウム動作のSTM-SQUID顕微鏡では、STMとSQUID顕微鏡の結合試験を経て、SQUIDセンサによる磁場測定とともに、スピン偏極STMによる高空間分解能測定を併用した、より正確な磁化分布の測定を試みる。また、STSを用いて高温超伝導材料における磁束量子の電子状態の微細分布の正確な描像を取得する。STM-SQUID による磁場の直接測定の前もしくは後に、特にボルテックス周辺においてCITS の高分解能測定をおこない、微分コンダクタンスを調べることによってSTS 状態密度像を取得する。STM-SQUID 像によりボルテックス磁場分布、STS 計測によってボルテックスコアの状態密分布を調べることによって、磁気的状態、電子状態の双方を同時期に計測することを可能とさせたい。形状や固有磁気信号の大きさの異なる試料を準備し、空間分解能や磁場分解能など、装置の定量的特性を総合的に評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請設備品はなく、低温試料測定用STM-SQUID 顕微鏡システムを用いて、超伝導体試料の磁気測定をおこなうための、治具製作、超伝導試料作成、その他、SQUID顕微鏡ヘッド改良などの消耗品と研究打ち合わせおよび成果発表の旅費に充てる。今年度予算の残額発生は、プローブアタッチメント用の基板と低融点金属が必要となったため次年度への繰り越しを選択したものである。
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