SQUID磁気顕微鏡と走査トンネル顕微鏡(STM)の特長を併せ持ったSTM-SQUID顕微鏡を用いて、磁性材料および超伝導材料の微細磁気特性を測定評価する手段を開発することを目的とし、2つのタイプのSTM-SQUID顕微鏡を開発した。 1つは、高温超伝導SQUIDセンサヘッドと液体窒素冷却試料ステージをそれぞれ別の真空槽に配置したSTM-SQUID顕微鏡(タイプA)であり、もう1つは、高温超伝導SQUIDと低温超伝導SQUIDのいずれも装備可能で液体窒素または液体ヘリウム浸漬型のSTM-SQUID顕微鏡(タイプB)である。 研究期間上半期においては、タイプAの装置での磁場分布計測が可能となり、超伝導線材を試料として常伝導状態と超伝導状態それぞれの電流パスの違いによる磁場分布を計測できた。また、バイクリスタル基板上のYBCO超伝導薄膜の磁場分布計測を実施し、フィールドクーリングにより発生した磁束トラップの様子を描出することができ、比較的広範囲な磁場分布計測装置として機能を確立することに至った。 超伝導薄膜のアンチドット試料のボルテックス観測を試み、試料全体の磁化を確認することができたが、ボルテックスの微細磁場分布を明瞭に観測することはできなかったため、STM走査分解能とボルテックスのピンニングをより強くして磁気信号のS/Nを向上させるための冷却温度のさらなる低温化を目的として、研究期間下半期においては、タイプBの装置開発を行った。 液体ヘリウム浸漬にて低温超伝導DC-SQUIDセンサの動作を確認し、プローブとSQUIDとの磁束伝達の手法として採用するニオブのトランスファーコイルの磁束伝達特性の調査を実施した。液体窒素浸漬において、高温超伝導RF-SQUIDセンサの動作と、STM計測をそれぞれ試験したのち、自作した高温超伝導薄膜による縞状パターンの磁場分布・表面形状像の同時計測環境が実現した。
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