電子機器からの不要電磁波ノイズを低減する際に重要な情報となる,電磁波源周辺の電磁界分布を正確に計測する手法として,誘電体散乱を利用した完全非金属性かつ信号伝達線が不要な電界センサを開発した.高周波電界中に半導体を設置して高周波の散乱体とし,そのバンドギャップエネルギーよりも大きなフォトンエネルギーをもつ光を照射すると,高周波散乱効率を局所的かつ選択的に変化させる事ができる.この特性を利用して散乱波に振幅変調を与え,遠方で受信した散乱波強度に基づいて散乱体位置の電界強度を推定できることを明らかにした. マイクロ波帯における散乱波の信号対雑音比の復調時定数依存性を明らかにし,検出感度を定量的に求めた.その結果,金属エレメントを付加した光電界センサと同程度の検出感度を,本提案手法による完全非金属センサで実現できることを明らかにした.この計測系は1kHz以上の変調周波数を達成し,従来の機械変調を用いた誘電体散乱電界センサの変調周波数(数十Hz)よりも大幅に高速化された.これにより,復調時定数1msでの電界計測を可能とした. また,アンテナの遠方界計測およびマイクロストリップラインの近傍界計測の結果から,散乱体照射光の直径を変化させることで,感度と空間分解能を連続的に変化可能なことを明らかにした. これらの計測において,受信される散乱波の偏波方向は散乱体位置の電界方向と平行なことを定量的に明らかとし,散乱波を受信するアンテナの偏波方向によって計測する電界方向を選択可能とした.
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