本研究は,パイロット信号を用いずにスパース通信路を推定する手法を開発し,移動無線通信における高速伝送へ応用することを目的とした.最終年度は,(1) OFDMにおける時間変化する周波数選択性通信路の推定と,(2)少数のパイロット信号を利用するセミブラインド推定法を検討した. (1)について,両選択性通信路のスパース性を考慮した基底展開によるモデル化を考案した.このモデルに基づいてブロックスパース推定アルゴリズムにより通信路推定を行った.購入機器を用いたシミュレーションにより,スパース性を考慮しない場合に比べて大幅に性能が向上することを確認した.この成果について国内学会発表を行った.移動高速無線環境においてパイロット信号の有効利用の可能性が明らかになったことで,今後のセミブラインド手法の開発への道筋が得られたことは意義深い. (2)について,OFDM伝送において,ブラインド通信路推定と極少数のパイロットによる通信路推定の組み合わせにより得られる決定論的スパースシステムをOMPアルゴリズムにより解くことを検討した.パイロットのみの場合とブラインドのみの場合に比べて推定成功回数を大幅に改善できることを確認した.これは初期的な検討ではあるが,セミブラインド推定の可能性が明らかになり,今後の課題が明確になったことは大きい収穫であった. 平成23年度と24年度には,(3)OFDM伝送におけるスパース通信路の推定,(4)シングルキャリア伝送のためのスパース通信路推定について検討し,パイロット信号を用いずに非ゼロタップを検出する方法を考案した.この検出結果を利用したブラインド通信路推定法の有効性をシミュレーションにより確認している.
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