研究課題/領域番号 |
23560435
|
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
武田 茂樹 茨城大学, 工学部, 准教授 (50323209)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | スマートシェルフ / アンテナ / RFID |
研究概要 |
この研究では,書籍管理を目的としたスマートシェルフの実現に向けてこれまでに研究を進めて来た単一伝送路技術を適用することを目的としている.非常に簡易な伝送路を書棚に設置することにより複数RFIDタグの同時読み取りを実現することが特徴である.終了年度までに,単一伝送路の設計指針を確立することを目標としている. これまでに行ってきた研究では,主に木製の棚を想定して,単一伝送路単体の特性解析を進めてきた.しかし,書籍の重量の関係で,特に海外では金属製の書棚が多いとの指摘があり,これに対する適用可否について検証を進める必要があった. そこで平成23年度は,おもに金属製の棚に対して単一伝送路を適用するための技術の確立を目指した.電磁界解析の結果,6段の書棚全体に単一伝送路を敷設し,書棚全体を読み取ることは困難であることがわかり,1段から2段程度に分けて読み取る構成とした.この構成では,単一伝送路のみを棚にあらかじめ敷設しておき,整合回路を伴ったリーダをこの単一伝送路に順次接続することを想定した.金属製棚と単一伝送路の間隔は2cmとしており,書籍を棚の背板にあたるように挿入した場合に読み取れるように設置している.この結果,自遊空間に単一伝送路が存在している場合に比較して,VSWRは劣化するものの,1.5以下の値が得られている,整合特性に問題がないことを確認した.またRFIDタグの受信電力を解析した結果,8cm間隔で配列した複数タグの受信電力がすべて閾値を上回ることを確認した,今年度はこの一連の研究により,単一伝送路技術が金属製棚に適用できることを確認できた. また,書棚を一括して読み取る構成と比較して,1から2段程度の段ごとによる読み取りは書籍の位置特定にも応用できるため,より適切な構成であると考えている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
単一伝送路を使用したRFIDタグによるスマートシェルフを実現する上で,最も懸念されたことは,本技術が金属製の書棚に適用可能であるかどうかという点であった.一般にグランドプレインとなる金属製書棚に単一伝送路を敷設する場合,電界が伝送路とグランドプレインとの間には強く存在するが,RFIDタグが存在する上部の電界が弱くなると考えられた.しかし,背板のある金属製書棚を想定し,さらにグランドプレインから2cm程度の間隔をあけることにより,グランドプレインと垂直な電界成分が発生し,RFIDタグの読み取りが可能となった.これにより,最大の懸念事項であった金属製棚への単一伝送路方式の適用可否について,必要とされる条件が明らかになることにより,単一伝送路の詳細設計を開始できる環境が整った.
|
今後の研究の推進方策 |
単一伝送路の金属製棚への適用の目途が立ったことにより平成24年度は以下の事項について検討を進めていく予定である.1.1から2段程度の段ごとの読み取りを想定する場合,この構成は書籍の位置特定にも活用が可能である.しかしこの場合,他の段にある書籍を読んでしまう可能性がある.したがって平成24年度はこの給電方法について検討を進める予定である.2.複数段に単一伝送路を敷設する場合,敷設方法にはさまざまは形態が考えらえる.たとえば分岐構造を適用する方法や,一本の伝送路を段ごとに折り曲げて設置することなどが考えられる.平成24年度はこの点に関し最適構造について検討を進めることとする.3.金属製書棚の場合,書棚自身を金属製伝送路として使用できる可能性がある.これが実現できれば,伝送路を敷設する必要がなくなり,より実用性のある技術となることが期待される.
|
次年度の研究費の使用計画 |
配分額の内,約10万円を物品費として使用する.ここでは,実験に必要となるプリント基板,銅板,コネクタ,ケーブルなどを購入する予定である.残りの20万円を研究成果発表用の旅費として使用する予定である.
|