研究課題/領域番号 |
23560442
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
山田 寛喜 新潟大学, 自然科学系, 教授 (20251788)
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研究分担者 |
山口 芳雄 新潟大学, 自然科学系, 教授 (50115086)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | MIMO / 伝搬チャネル / セキュリティセンサ / アレーアンテナ / 位置推定 |
研究概要 |
今年度は,実験系の構築と変動検出アルゴリズムの確立を目的として研究を進めた.まず,実験系の構築としては,ネットワークアナライザによる広いダイナミックレンジを有するが個々のチャネルを順次計測しなければならない測定系(すなわち静的環境でのみ有効),およびディジタルオシロスコープを用いた動的変動に追従した測定計の双方を構築した.今年度は,特にネットワークアナライザに基づく測定計での実験を行い,素子数・アンテナ配置・アルゴリズムによる検出感度の変化を明らかにした.さらに,レイトレース法による伝搬シミュレーションの比較検討を行った.特に4x4-MIMO構成時の特性解析を集中的に行い,いくつかの想定される配置の中で,どれが効果的かを明らかにした. さらに,MIMOチャネルの相関を検出規範としたアルゴリズムに関する理論的検討を行い,評価量の確率密度関数を導出した.これにより,信号対雑音電力比,および,侵入無し時の信号電力と侵入時の変動電力に対して,評価パラメータがどのように変動するのか,その予測値の確率分布を示した.これらは,強いマルチパス環境,すなわち,レイリー散乱環境において,侵入による電波伝搬経路の遮断が,電力のロス,すなわち,侵入者に照射した電波は侵入者に吸収されることを仮定したものである.今年度は,シミュレーションにより,その妥当性を示した.これにより,与えられた信号環境/侵入者変動により,評価パラメータがどの程度変動するのかの理論解析が可能となる,これらは見逃し検出確率/誤警報確率などのレーダ・センサの性能評価で重要な指標の基礎となるものであり,特に重要な検討項目である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験系の構築に関しては,当初の予定通り順調に進み,ネットワークアナライザを用いた静的環境実験(1送信1受信を繰り返しMIMOチャネルを推定)に加え,2x4-MIMO測定までを可能とするディジタルオシロスコープによる動的環境測定系を構築を終えている. 上記を用いた様々な素子構成・アンテナ配置での実験を実施し,各種検出アルゴリズムでの実験的評価も予定通り進んでいる.レイトレース法による伝搬シミュレーションによる評価も,ある一定のモデルに対しては,ほぼ完了しており,有効な配置が明らかとなった.その意味で順調である.ただし,実験結果とシミュレーションの比較検討/精度評価の点に関しては,まだ互いに対応したモデルのデータが不足しており,さらなる実験・解析が必要である. 検出アルゴリズムに関する理論的検討は,非常に順調に進んでおり,チャネル相関型の検出アルゴリズムに関しては,その検出パラメータ値の確率密度関数の理論式の導出を完了した.これは非常に大きな成果であり,今後の研究に弾みをつけるものといえる.
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今後の研究の推進方策 |
導出したチャネル相関を用いた変動検出規範(アルゴリズム)の確率密度関数の妥当性を実験により実証するのが,最も重要な課題である.次に,固有ベクトルを利用する変動検出規範についても,同様に理論式の導出/実験を行う予定である.なお,この導出に関しては,昨年度の知見により,ほぼ道筋がつけられている.これらが解明されれば,素子数,アンテナ配置と侵入者による受信電力変動から,その統計的な検出確率を評価することが可能となる. 素子数,偏波を含めたアンテナ配置,周波数をパラメータとした実験を行い,それらの電力変動とシミュレーション結果との比較,さらには,前述理論値による検出性能評価を行い,各設定において,どの程度までの変化が検出可能となるかを解析する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は,実験が主となる.従って,研究費は,アンテナ材料や治具,およびコネクタやケーブルなどのマイクロ波部品といった消耗品での利用を予定している.また,平成23年度に得られた未発表成果および平成24年度中に得られた成果を国際会議,研究会,全国大会などの学術集会で発表するための旅費としての利用を予定している.
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