研究課題
本年度は,(1) ANN(Artificial Neural Network)を用いた交通手段の推定方式の確立と,(2)渋滞状況推定方式に関して検討を行った.以下,その詳細について述べる.(1) ANN(Artificial Neural Network)を用いた交通手段の推定方式に関しては,昨年度実験によって取得した乗用車,バス,オートバイ,徒歩の交通手段における速度変化(加速度)データを学習させ,ANNを用いた交通手段の推定を行った.ただし,推定精度を高めるため,速度変化(加速度)だけでなく周囲の騒音も入力データとして用いた.これにより,約90%の精度で上記4種類の交通手段を推定できることが明らかになった.(2) 渋滞状況推定方式に関しては,各道路セグメントにおいて車が占有していないスペース(フリースペース)の割合と,セグメント内に存在する車の平均速度を指標とした.これら2つの指標を2次元座標で表現し,各象限における定性的な渋滞状況を提示することに成功した.また,定量的な渋滞状況を提示するため,フリースペースと平均速度の値からGoodness Valueという量を定義した.結果として,定性的かつ定量的に渋滞状況を推定する方式を明らかにした.加えて,本渋滞状況推定方式の評価を行うため,交通シミュレーションを行う準備を行った.詳細結果は未だ出力していないが,評価を行うために十分な体制を築くことができた.
2: おおむね順調に進展している
補助金申請時の研究計画をほぼすべて実施し,必要とされる検証および考察を行うことができたため.
来年度は本補助金による研究は最終年度であるため,最重要課題である携帯電話網の負荷低減法の考案と,提案手法の有効性評価を十分に行う.以下,これらについて述べる.(1)携帯電話網の負荷低減法位置情報の送信頻度が高いほど交通状況推定精度は高くなるが,携帯電話網が輻輳する可能性がある.本研究では,車の速度変化が著しいときのみ位置情報を送信することでこれを改善できると考える.したがって,どの程度の速度変化を位置情報送信タイミングとすべきか判断するため,交通手段の区別および渋滞状況の推定精度と,位置情報量との関係を明確化する.例えば,80%の推定精度を得るためには位置情報送信頻度がどの程度であるべきかを結論づけるための検討を行う.それらの結果を用い,常時位置情報を送信する場合と比較して必要使用帯域との関係を考察する.(2)本研究の有効性と実現性の評価実際に一般の人々に様々な交通手段を利用してもらい,このような実験を携帯電話会社と協力して行うのは現段階では困難である.将来的には社会実験として提案したいが,ここでは交通シミュレータに本提案を実装することによって,本研究の有効性および実現性を評価する.
本研究における提案手法の有効性評価に交通シミュレータを用いる.したがって,交通シミュレータソフトの購入,および,それを稼働させるためのコンピュータ(ディスプレイを含む)を整備する.また,研究成果を論文にて発表する予定であり,論文別刷代も計上する.さらに,研究ステップごと(おおよそ2~3か月)に成果をまとめ,学会発表および国際会議発表を行うため,5回の国内外旅費を計上する.
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (19件)
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