研究課題/領域番号 |
23560472
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
西 哲生 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40037908)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 精度保証 / 条件数 / 悪条件行列 / たちの悪い方程式 / 解の個数 |
研究概要 |
当初計画の「たちの悪い」(条件数の大きな)行列の生成のうち、単に大きな条件数ということだけではなく、精度保証付き数値解法の性能評価に"より"ふさわしいベンチマーク行列の生成について検討した。最初の試みとして、ブロック上対角行列という特殊な形についてではあるが、特異値が対数的に等間隔に並ぶ行列の近似的生成法を提案した。この方法について数値例による検証を行ったところ、理論的に予想される結果に極めて近い結果が得られた。本結果については論文として発表した。上記の同じ形の行列を用いて、特異値が極端に大きなものと小さなものに分離する行列なども生成でき、これらもベンチマーク行列として有用と考える。 たちの悪い回路の生成に関連して、n変数、(n-1)個の式からなる典型的な非線形方程式(解曲線方程式とよぶ)の解曲線について検討した。上記の方程式はn変数、n式からなる方程式F(x)+Ax=bの第1式を除いた式である。行列Aが(以前本研究代表者が定義した)Ω行列でない場合にはこの方程式の解の個数の上限は押さえられないが、AがΩ行列の場合には有限個の解をもつ。AがΩ行列の場合に関して次のような極めて興味ある結果を得た。1)解曲線方程式のヤコビ行列は常にフルランクである。2)解曲線群は、2種類の解曲線からなる。本結果の一部については、電子譲歩応通信学会回路とシステム研究会で発表を行った。残りについては出来るだけ早い時期に発表予定である。 なお、上記の研究の過程で分かることであるが、非常に狭い範囲に多数の解をもつ方程式は精度保証付きで極めて解きにくいと予想しており、この方向で今後検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の研究目標の半分程度および2年目の研究目標の予備的検討を平成23年度に行い、たちの悪い回路生成に関する基礎研究としては予想以上の結果が得られたと考えている。 精度保証付き計算アルゴリズム評価に対するベンチマーク行列として、あまり偏った特異値分布ではなく、ある意味でランダムなまたは一様に分布する特異値分布が望ましい。また、あまりスパースな行列ではなく、一般的な行列が望まれる。23年度では、大きさが大小の特異値が互いに逆数関係となる場合の一生成法を示し、この中でも特殊な「特異値が大きさに関して対数的に等間隔な場合などについて、理論的考察と数値実験による検証を行った。ただし、これらはブロック上三角行列という特殊な形の行列に基づいており、より一般的な行列による生成法が望まれる。
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今後の研究の推進方策 |
たちの悪い行列の生成に関しては、23年度の延長として、まずブロック上三角行列ではなく、より一般的な行列による生成法を検討する。このためには、整数行列でかつ各行が互いに直交する「拡張された直交行列」の一般的な生成法を検討する。 また、23年度に予定していた、「行列式が1の行列で、かつ極めて大きな小行列式をもつ生成行列の生成法を、Siegel-Bombieriのディオファンティン方程式に関する定理などを利用した生成法を検討する。 回路解析プログラムSPICEの精度については、当初予定の通り、25年度の検討する。 研究体制(研究組織及び役割分担)について当初の計画通りで、理論解析的側面と数値計算による評価・検証の側面}からなる。前者を主として研究代表者(西・早稲田大学)が検討し、後者及び計画$2$については主として高橋規一准教授(九州大学)が検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画に沿って、研究費の主な使途は、研究成果発表・資料収集のための旅費、書籍購入費、PCソフト購入費を予定している。旅費に関しては具体的には、10月下旬にスペインで開催予定の国際会議(International symposium on nonlinear theory and its applications; NOLTA)への出席(論文投稿中)、鹿児島で開催の電子情報通信学会非線形理論研究会(投稿予定)での発表参加を予定している。書籍については必要な都度随時購入予定。
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