本研究では,小形アンテナの特性改善をねらいに,特性モードおよび多導体伝送線路モードの理論(モード理論)による小形アンテナの解析と設計手法について検討を行い,小形アンテナの広帯域化,マルチバンド化を目的とした.モード理論を用いたアンテナ設計を行うことにより,現在行われている電磁界シミュレータなどを用いた試行錯誤的な設計から脱却し,系統立ったシンプルな設計手法の確立を目指した.平成25年度では,平成24年度に引き続き(1)多層または多導体で構成したアンテナの解析,(2)既存システムに適用可能な広帯域,マルチバンド小形アンテナの解析を計画した.これらのうち,(1)については2ないし3導体で構成したアンテナの解析を進め,等価回路による検討を行い,帯域の理論限界などを導出し,これらについては論文にまとめて学会にて発表を行った.(2)については,スマートフォン・携帯電話の帯域をねらいに約1GHzで動作する小形アンテナについて扱い,本理論の適用,シミュレーションによる解析,試作実験を行った. 本年度は最終年度として3年間の内容を総括し,当初の目的であった(1)方形や円形パッチアンテナ,板状モノポールアンテナで生じる特性モード,(2)多層または多導体でアンテナを構成した場合に生じる特性モードと伝送線路モード,(3)特性モードおよび伝送線路モードを用いた放射特性および回路特性ともに広帯域,マルチバンドの特性を有する小形アンテナの実現,(4)既存システムに適用可能な広帯域,マルチバンド小形アンテナの実現,各項目について見直しを行い,成果について概括した.結果として,(2),(3)の目標はおおむね達成したものの,(1),(4)については継続して研究を進める必要が生じた.
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