研究課題/領域番号 |
23560479
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
棟安 実治 関西大学, システム理工学部, 教授 (30229942)
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研究分担者 |
花田 良子 関西大学, システム理工学部, 助教 (30511711)
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キーワード | データ埋込 / 印刷画像 / データ抽出 / 携帯端末 / レンズ歪み補正 / 幾何学歪補正 / 最近傍補間 / 解像度 |
研究概要 |
本年度は,携帯端末を用いたデータ抽出アルゴリズムの開発として,前年度開発した高速化手法をさらに改良した.具体的には,これまで問題であった検出率の劣化をカバーする方法として,レンズ歪み補正のための歪み係数の推定手法について実験的な検討を行った.結果から,画像に付加する枠線から得られる4つの歪み係数のうち,大きい3つの係数の平均値を歪み係数とすることで検出率を改善できることがわかった.実験結果から目標であった95%を超える検出率を達成することができた.処理時間の点においても,昨年度とほぼ同等の処理時間で処理できることも明らかにした.このため,携帯端末に実装を行うアルゴリズムをほぼ確立できた. 埋め込み可能なデータ量の増加についてもスマートフォンをターゲットとして,さらに検討を行った.この結果,現在検討中のデータ量増加法では,最近のカメラ解像度の高い機種でより効果を発揮することが明確になった.これにより,埋め込み量についても当初の開発目標をほぼクリアできたと考えている. このようにアルゴリズムがほぼ確立したことを受けて,データ抽出アルゴリズムのCプログラムへの書き直しを行った.書き直しはほぼ終了し,若干の不具合はあるものの一応動作することを確認している.このため,スマートフォンを指向した携帯端末への実装については,端末上で動作させるところまで今年度中に到達することが出来なかったが,その準備は完了したといえる.また,画像の取り込みを安定させるためにキャプチャ画面にどのようなガイドラインを表示するのが適当であるかという検討を行い,複数の画面を準備して検出率の評価を行った.その結果,適切なガイドラインを決定することができたので,これも端末への実装の一部として実現する予定である. 画像のスケーラビリティについても検討は進んでおり,A4用紙全体に情報を埋め込む手法についても開発を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PSNR40dB 以上,検出率95%以上,英文字35文字という抽出・埋め込みアルゴリズムの目標については,ほぼ達成可能なアルゴリズムを開発できているといえる.また,処理速度についてもパソコン上ではあるが2秒弱で処理可能なMatlabプログラムを完成させることが出来ている.また,Cプログラムへの書き換えも進んでいることから,端末の処理が遅くともある程度の処理速度を確保できると考えている.このため,携帯電話などのモバイル端末に付属するカメラを利用したデータの抽出技術の開発における携帯アプリケーションとしての実装の基礎は完成している. 画像の大きさ・種類に応じた手法の開発についても,ある種のスケーラビリティを有する手法を開発したので,まだ検討の余地はあるもののQRコード同様,ある程度自由度のある手法に発展させる足がかりが得られたと考えている. 動的に変更可能な表示装置からのデータ抽出技術の開発についても,現在の手法をベースとして,埋込・抽出アルゴリズムの検討を行うことができるので,平成25年度中に実装を行い実験が可能となる状態に達している.時間軸方向にどのような工夫をするかについては,現在検討できていないが,実験を通じて検討できると考えている. 理論的解析と応用の開拓については,現時点では着手できていないが,これはアルゴリズムの確定が必要であるため,25年度の作業としてあらかじめ予定しているため,特に問題とは考えていない. 全体として,調書にあげた今年度の目標については,わずかに遅れている部分はあるもののおおむね達成することができており,着実に研究目的を達成できているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度として,まず,スマートフォンを指向した携帯端末への実装とその検討を最優先で行う.特に,最近利用可能になったWindows8のタブレットPCも対象とすることで,動的表示可能な装置を用いたアルゴリズムの実装と評価を行い,特に時間方向での冗長性を何らかの形で取り入れたアルゴリズムを完成させる. 次に,開発した手法のロバスト性に関する理論的・定量的評価については,現在ある程度確定したアルゴリズムについて,処理の数学的なモデル,特に歪みの数学的なモデルを記述することによって,理論を構築する.さらに実験と理論の比較を通じてモデルをリファインすることで検出率などの理論的な推定と次のアルゴリズムへの発展につながる成果を得たいと考えている. 新たな応用の開発としては,予定通り,仮想現実感で用いられるビジュアルタグへの応用をターゲットとして,美術館案内システムとして用いる場合に必要な要件の洗い出しと実現を目指す予定である. これらの成果については,国内外の研究集会を通じて積極的にその成果を公表するとともに,論文としての取りまとめを行う.また,Webサイトを通じた広報についても本格化していきたいと考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は,論文の掲載が25年度になったため,論文掲載料が執行できなかったことと,出張先が変更になったことをうけて20万程度の残額が出た.これらについては,論文掲載が25年度になったことと論文掲載料が当初予定より若干増える見込みのため,執行は可能であると考えている. これらの他に,次年度の研究費の使途は以下のように考えている,消耗品費を実験に不可欠なトナーなどプリンタ消耗品に充当する.旅費については,引き続き積極的に国内外の学会を通じて成果を公表するために用いる.現在,成果の発表を予定しているものとして,9月下旬に名古屋において開催される国際会議SISA2013,11月下旬に沖縄において開催される国際会議ISPACS2013,電子情報通信学会スマートインフォメディアシステム研究会がある.旅費はそれらの会議への参加のために充当する. 謝金については,前述のソフトウェア作成のアルバイト代として利用するとともに,研究成果のデモンストレーションのためのホームページの更新のためのアルバイト代に当てる.その他の経費については,成果を電子情報通信学会の論文誌に投稿する,あるいは前述の国際会議に投稿する際の英文校閲費および研究会に発表する際に必要な別刷の代金に充てる予定である.
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