本研究では、譲渡可能効用を持つ協力ゲームの全体が通常の和とスカラー倍に関し線形空間をなすことに着目し、この空間に適切な基底を導入することにより、ゲームの諸性質、その解の定義、特徴付けについて考察した。以下に平成26年度の主たる研究実績を述べる。 1.協力ゲームの双対ゲームに着目し、ゲーム空間の基底に対しその双対ゲームの全体がやはり基底となることを示した。特に満場一致ゲームに他する双対ゲームが前年度詳細に考察したサポートゲームに一致することを確認し、ゲームの線形結合係数として双対dividendを定義した。加法的ゲームや凸ゲームに関する双対性について論じ、さらにゲームの解としてのコアやShapley値などの双対性についても結果を得た。さらに、双対ゲームの多重線形拡張、Lovasz拡張の表現を求めた。 2.協力ゲームにおいて、実現可能な提携に制限が加わる場合について考察した。実現可能な提携全体からなる集合システムにはこれまで取り扱いやすさ、実際的意味を考慮して特別な組合せ論的構造が仮定されてきたが、ここではそれを前提としない一般的な場合を扱った。もとのゲームに対して、提携可能集合にはゲームの値を用い、提携不可能集合にはdividendを0とおくことにより、修正ゲームを定義した。修正ゲームに基づく解を提案しその公理的特徴づけを行った。さらに、もとのゲームのdividendを用いた直接的解も定義しその公理的特徴付け、修正ゲームを介した解との関連性について考察した。 3.プレイヤーとソースを頂点に持つグラフの最小コスト有向木問題から派生するゲームは興味深い。実際に最小コスト有向木を求めるアルゴリズムで得られる値が1の研究で考察した双対dividendに一致することを明らかにした。これによりゲームの解としての解釈が可能なコスト分配ルールを定義した。
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