日本海域においてダクト伝搬によるUHFテレビ電波の受信障害がある。この障害は,日本海側や韓国のUHFテレビ電波が日本海を越えて数百km以上伝搬するために起こる。本研究の最終目的は,この原因となるダクトの発生を予報することにある。 まず,石川県津幡町の固定観測結果からダクト発生の特徴は,①晴れた日,②10月~2月にほとんど発生しない,③4・5月と7・8月に発生率のピークがあること分った。また,発生原因とした黄砂は,年中日本海上を漂っている情報を得たので,春4月には発生し秋10月に発生しない原因は,日本海の反射点付近の海面温度の違いであると2014年11月に学会発表した。そして,インターネット公開の海面温度データを収集・参照できるWebシステムを構築し,任意のエリアのダクトの発生と海面温度との相関を調べている。このシステムは誰でもWebブラウザから公開利用でき,予報に向けたシステムであるが,現在は学内のセキュリティポリシーのため学内に限定されている。 これまでの固定観測間には,デジタル放送開始,アナログ放送終了などのイベントがあり,観測データの遍歴を石川工業高等専門学校紀要(2015.3)にまとめた。その中,2013年に観測された53ch(700MHz)以上の韓国のデジタル放送が2014年には観測されなくなった。2013年からアナログ放送を停止した韓国がデジタル放送の周波数移行を進めている情報を得たので,2014年12月に上対馬で韓国の釜山に向けてTV放送を受信観測した。結果,日本と同じく700MHz以上では,UHFテレビ局がなくなったことが分った。 最後に,ダクト伝搬を完全に確定させるための到来波仰角測定は,フェージング等の問題が解決していない。また,ダクトの広がり調査には,多地点固定観測が必要であるとの示唆を移動観測から得た。これらの調査は,研究期間終了後も継続する。
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