研究課題/領域番号 |
23560492
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
相津 佳永 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20212350)
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研究分担者 |
島谷 祐一 東京都市大学, 工学部, 准教授 (20154263)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 皮膚計測 / ハイパースペクトル / イメージング / 分光反射率 |
研究概要 |
1.高輝度LED照明を利用し,現有の液晶型波長可変フィルター,ならびに高感度高画素CMOSカメラによるハイパースペクトルイメージング光学系を製作した.これを専有PCで制御できるようにした.対象波長範囲は当初予定から変更し,波長可変バンドパスフィルターの透過率を考慮して,可視波長領域430-720nmとした.この範囲を2秒以内で撮像可能なソフトウェアをMATLABで開発した.2.フィルターの分光透過率を計測し,一方日本人皮膚の標準的な分光特性は公開データベースを活用し,波長毎に適正なカメラ露光時間を割り出した.白色校正には現有のスペクトラロン高精度標準白色板(可視領域平均反射率99.8%)を用いた.以上より波長別自動補正プログラムを開発した.3.スペクトルキューブによる高効率圧縮保存方式の確立: 以上より得た画像データ群をピクセル単位の分光反射率データ群としてx-y軸に画像,z軸に波長をもつ3次元のハイパースペクトルキューブとして再構成し,非可逆圧縮方式により保存する方式を採用した.これによる画質劣化はほぼ影響しないことを確認した.4.対象領域抽出用の高速画像検索法開発: 430-720nmの各波長画像(当初計画を改め計測時間効率のため10nm間隔30画像)を高速検索し,疾患疑いの領域を最もコントラストよく識別可能な波長画像を自動抽出するアルゴリズムを開発した.また領域分割により対象領域画素アドレスを記録する方式を採用した.これには空間相関に基づく偏差比較を適用した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,皮膚ガンの確実な検出を目指し,腫瘍部のメラニン・血液濃度変化による光吸収係数と組織構造変化による光散乱係数を,ハイパースペクトル画像から得たピクセル単位の高空間分解分光反射率に対して9層構造皮膚モデルに基づき,皮下内部組織の各層に光学的吸収係数と同散乱係数を規定して得られる計算分光反射率をデータベース的に高速フィッティングすることで同定し,微小腫瘍および内部異常部位の高確度な検出を行う皮膚ガン診断支援イメージングの新規開発を目的としている. 現時点で,まず液晶型波長可変フィルターの透過率分布を皮膚の生理学的分光特性も含めてカメラ露光時間で補正する波長別自動補正制御型ハイパースペクトルイメージング装置を計画通り設計・開発した.さらにピクセル単位の分光反射率データをx-y軸に画像,z軸に波長をもつ3次元ハイパースペクトルキューブとして構成し,高効率で圧縮保存する手法を開発した.当初計画の効果的な装置ハードウェアおよびソフトウェアが構築できたことで,研究は概ね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
9層構造皮膚モデルを使い層毎の様々な生理学的条件の吸収・散乱数値に対する計算分光反射率を大量生成,ライブラリ化した後,高速検索容易な階層型データベースを開発する予定である. また,測定装置で得られる分光反射率を,上記データベース計算分光反射率ライブラリとパターンマッチングにより照合し,両者が一致する計算分光反射率を見いだすことにより9層各層の吸収係数・散乱係数値を同定する高速スペクトルフィッティング法をGPUにより開発したい. 以上より得られる数値を正常部と比較し,個人差・部位差の影響を受けない安定した異常判断を行うアルゴリズム,並びに異常判断部位の効果的な3次元画像表示システムを構築する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
イメージング測定装置の部品の一部が当初見積額より安価に入手できたこと,および納入が長期化する部品がでたため,それについては現有の研究室在庫部品で対応できたことにより,残額が生じた.これについては,24年度に計算分光反射率を大量生成・ライブラリ化するにあたり,大量データの高速計算と保存及び読み出しの効率化を進めるため,コンピュータ及びハードディスク周りの機器を上位性能のものに計画変更し,支出増に充当するために使用することを計画している.また,一部生体・動物などからの皮膚のサンプル分光反射率データがまだ不足していることが分析結果から分かってきたため,追加データ取得のための実験機材や試料・薬品の調達にも充当することを予定している.
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