本研究は,皮膚ガンの確実な検出を目指し,腫瘍部のメラニン・血液濃度変化による光吸収係数と組織構造変化による光散乱係数を,ハイパースペクトル画像から得たピクセル単位の高空間分解分光反射率に対して多層構造皮膚モデルに基づく計算スペクトルフィッティングにより同定し,微小腫瘍および内部異常部位の高確度な検出を行う皮膚ガン診断支援イメージングの新規開発を目的として実施した. 最終年度は 昨年度開発したフィッティングアルゴリズムの一部で,異なる組織変化にも関わらず類似したスペクトルを示す例が分かったため,これらに対して,文献調査に基づく医学的先見情報を活用し,特に光の散乱か吸収かの要因判別精度を高めるアルゴリズムの改良を行なった.また,正常部と疾患疑いの領域の吸収・散乱係数を皮膚の各層で比較し,シミュレーションによる学習データを参照することで,一定の閾値以上の差異で異常と判断するアルゴリズムを開発した.これで個人差・部位差の影響低減に活用できるようになった.異常部位を拡大画像表示するソフト等はMATLABにより開発した.ハイパースペクトル画像データ群の波長間での位置ずれについては,マーキングを利用し簡易な手法で確実に補正することができるようになった. 構築したシステムを,関連研究で取得してあった皮膚組織画像データ群に適用した検証実験で,本手法の有用性を確認した.特に吸収と散乱が大きく変化する過程,ならびに吸収の中でも異なる色素成分の判別が良好に行えることを確認した.
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