本研究は、防波堤として用いられているケーソンを対象に、複数のセンサと小型インパルスハンマを用い、打撃により発生した振動が欠陥から反射して返ってきた波を解析し、反射波の到来時刻から欠陥の位置を推定する方法である。しかし、ケーソンは複雑な構造をしているため、従来、実験結果を見ただけでは、正しい結果かどうか判断できなかった。そこで、有限要素法の一種であるFDTD法をケーソン解析に適用し、実験結果と照合する方法を確立した。この際、実験を解析する前処理として適切なフィルタを使用することにより、実験結果はFDTD法の結果とほぼ同じになること、すなわち、提案法で推定された反射波の到着時刻がシミュレーションで設定された時刻と一致することを確かめた。この処理を6個のセンサ全てに対して行った後に指向性合成により、正しく欠陥の位置を推定できることを確かめた。こうして得られた手法を実際に、3個のケーソンに対して適用した。このうち2個は欠陥が実際に存在するケーソンで、1つは欠陥のないケーソンである。欠陥のあるケーソンでは、正しく欠陥のある位置を検出できたが、その他に、施工上存在する上部コンクリートの底面と目地からの多重反射波も確認された。一方、欠陥のないケーソンの場合、上部コンクリートの底面と目地からの多重反射波だけが確認された。これら上部コンクリートの底面と目地からの多重反射波の位置と欠陥の位置が重なると欠陥位置の推定が困難になる可能性がある。これについては、打撃位置を変えることにより解決可能と考えられが、検証のためには追加実験が必要である。本研究では更に、遺伝的アルゴリズムを並列処理できるように改良し、計算時間を約1/30に減少することができた。
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