研究概要 |
ガラス材料は、添加物(ドーパント)を加えることにより屈折率や膨張率などの物理特性を大きく変えることが可能である。所望の特性を有するガラスを作製するためには、作製したガラスを適切に評価するための計測技術が重要である。本研究代表者らは、物質・材料の音響特性を非破壊・非接触的に定量計測する「超音波マイクロスペクトロスコピー(UMS)」技術の基礎研究および材料評価への応用に関する研究を進めている。 本研究の目的は、ガラス材料の分野における新しい評価技術としてUMS技術を用いた方法を確立することである。機能性材料として開発が進められている合成石英ガラス、フッ素ドープSiO2ガラス、結晶化ガラス、強化ガラスを取り上げて、UMS技術により評価を行うとともに、従来のガラス材料評価法と比較することにより、ガラス材料評価法としての有用性を示す。さらに、ガラスの構造解析ツールへの発展を目指す。 本年度は、UMS技術を化学強化ガラスに適用した。化学強化ガラス試料として、アルミノ珪酸ガラスを取り上げた。4枚の基板に対して、425℃のKNO3中で、0.5 h, 1 h, 3 h, 8 hの化学強化処理を行った。また、リファレンスとして、未処理基板を1枚用意した。直線集束ビーム超音波材料解析システムにより計測される漏洩弾性表面波(LSAW)速度、漏洩擬似縦波(LSSCW)速度を測定するとともに、光学式の表面応力計により表面応力と応力層深さの測定を行った。その結果、LSAW速度やLSSCW速度の周波数依存性の測定から、表面応力の分布を検出した。また、LSAW速度とLSSCW速度の応力層深さに対する分解能は、それぞれ0.12 μm、0.52 μmと求まり、UMS技術が強化ガラスの作製プロセスの評価や品質管理に有用であることを示した。
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