前年度は、ネットワークアナライザから送出された高周波電気信号を、金属配管の一端から電磁波として金属管内に放射し、金属管内を伝搬させた後に他端で受信して伝達関数を計測することで、金属管の変形・異物の混入などを検出する試験方法を開発した。そこで平成25年度は、前年度の検出精度向上を可能とする計測方法の開発を実施した。 今年度新たに発案・実施した計測方法は、金属配管の一端(入射側)から電磁波を放射し、一方の他端を電気的に終端しておき、入射端における電磁波伝達関数の反射波特性(SパラメータのS11特性)を計測する方法である。この計測方法は前年度に考案して一部実施していたものであるが、今年度の計測方法では正常な金属配管・同軸導波管変換器・矩形円形導波管変換器などの計測環境を全て一括して校正し、金属管に生じた異常を反射波伝達関数特性(SパラメータのS11特性)として計測することで、より高感度な異常検出を可能とする計測方法である。 この新たな計測方法の導入により、金属管中に置かれた直径5mm×厚さ2mmのナットを検出することが可能となった。これは、前年度と比べ約5倍の検出感度である。また、内部が滑らかな金属管だけでなく、途中で内径が異なって段差がある金属配管の異常検出についてもシミュレータを用いて検証した。その結果、この場合も金属管全体を一括して校正する方法が有効に働き、内径が単一で滑らかな金属管の場合よりは異常検出感度が低下するが、前年度よりも高感度な計測が可能であることが判明した。 以上の研究結果により、工場プラントなどで使用される金属配管の異常検出試験方法の基礎原理および計測可能性の実証をおこなうことができた。これにより、新たな金属配管の異常検出試験方法の基礎を確立することができた。
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