研究課題/領域番号 |
23560501
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
伊藤 秀明 信州大学, 工学部, 准教授 (60143989)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 音叉型水晶振動子 / 触覚センサ / 動的容量 / 粘弾性 |
研究概要 |
音叉型水晶触覚センサは動的容量が接触する物体のヤング率と粘性率によって変化することを用いている。今回、接触する物体をフォークト体の粘弾性モデルで表し、音叉型水晶振動子をL字型棒で近似し、そして、アクリルケースからの基底部を押さえる力を軸力で表して、1本の腕の振動の歪エネルギーと基底部が物体から受ける反力と粘性力による力学的エネルギーの総和が音叉型水晶振動子の共振時の等価回路の容量Cの半分に蓄えられる電磁エネルギーに等しくなるというエネルギー保存則から動的容量の理論式を導出した。また、分数階微分によるフォークト体の粘弾性モデルでも解析したが、DMAで温度を変えて求めた合成ゴムの動的ヤング率と動的粘性率から変換式により32.5kHzでのヤング率と粘性率を求めて代入した前者のモデルによる計算値は合成ゴムへの触覚センサの接触実験によるインピーダンス・アナライザで測定した動的容量変化の逆数の値とほぼ一致し、後者のモデルによる計算値は実測値よりも大きくなった。これらから、音叉型水晶触覚センサの動的容量は接触する物体(合成ゴム)のヤング率と粘性率(フォークト体の粘弾性モデル)によって変化することが明らかになった。周波数を変えた音叉型水晶振動子として50kHzと70kHzの2種類の音叉型水晶振動子を入手して動作確認を行ったが共振抵抗が動的容量を安定に測定できる値まで下がらず、現在その原因を究明しつつ、更に、動的容量の解析に電気機械結合係数を用いる方法が電極幅と電極長さを考慮したL字型棒モデルで音叉型水晶振動子の動的容量を6%の精度で理論値と実験値が合うことが判明したので、これを拡張して音叉型水晶触覚センサの動的容量変化を予測する理論式を構築する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の目的の(1)(2)である音叉型水晶触覚センサの動的容量は理論と実験により接触する物体(合成ゴム)のヤング率と粘性率(フォークト体の粘弾性モデル)によって変化することが明らかになった。また、目的の(3)であるボード・ネットワーク・アナライザAdvantest R3755AAによる音叉型水晶触覚センサの測定は32.7kHz、50kHzと70kHzの3種類の音叉型水晶振動子で製作した触覚センサの共振抵抗が150kΩ位に下がらず、インピーダンス・アナライザで接触したときの動的容量が安定に測定できていないので、現在その原因を究明している最中である。
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今後の研究の推進方策 |
32.7kHz,50kHzと70kHzの3種類の音叉型水晶振動子で動的容量が安定に測定できる共振抵抗の小さい(150kΩ位)の音叉型水晶触覚センサ用振動子を新たに入手すると共にシリコンゴムと合成ゴムで接触実験を行う。また、動的容量の解析に電気機械結合係数を用いる方法が電極幅と電極長さを考慮したL字型棒モデルで音叉型水晶振動子の動的容量を6%の精度で理論値と実験値が合うことが判明したので、これを拡張して(具体的には接触する物体をフォークト体の粘弾性モデルで表し、アクリルケースからの基底部を押さえる力を軸力で表して)音叉型水晶触覚センサの動的容量変化を予測する理論式を新たに構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
32.7kHz,50kHzと70kHzの3種類の音叉型水晶振動子を入手するのに必要な費用と触覚センサの接触実験に使う材料費、その他に、電気機械結合係数を用いて音叉型水晶振動子及び音叉型水晶触覚センサの動的容量を導出する解析手法を2012European Frequency and Time Forum及び2012 IEEE International Ultrasonics Symposiumの国際会議で発表するための参加費が必要である。
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