研究課題/領域番号 |
23560501
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
伊藤 秀明 信州大学, 工学部, 教授 (60143989)
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キーワード | 触覚センサ / 動的容量 / 音叉型水晶振動子 / 粘弾性体 |
研究概要 |
音叉型水晶触覚センサは音叉型水晶振動子の基底部が接触する物体のヤング率と粘性率によって、その動的容量が変化することを用いている。今回、その動的容量の解析式を導出するのに電気機械結合係数を用いる方法を採用した。ねじりバネ係数を含んだL字型棒モデルに接触する物体として弾性基礎モデル(物体のヤング率をウインクラー係数で扱う)で記述して動的容量の解析を行った。この解析の結果、以前求めた1本の腕の振動の歪エネルギーと基底部が物体から受ける反力による力学エネルギーの総和が音叉型水晶振動子の共振時の等価回路の動的容量の半分に蓄えられるで電磁エネルギーに等しくなるというエネルギー保存則から求めた動的容量の解析式では接触前後で動的容量は低下するが、今回求めた理論では接触前後で動的容量は上昇した。接触する物体のヤング率に対する変化の仕方は両者共に同じ傾向であるが、変化の方向は両者で逆になり、変化量は前者より後者の方が2桁小さいことが判明した。以前行った接触実験では音叉型水晶触覚センサの接触前後の動的容量の変化はアクリルケースで音叉型水晶触覚センサの基底部を挟み込む位置によって低下する場合と上昇する場合の2種類の結果が得られている。両者の解析共にアクリルケースで音叉型水晶振動子の基底部を挟み込む位置は基底部の伸び、縮みがない中立線であると仮定して計算している。違いは基底部の物体からの反力による力学的エネルギーの取り扱いにある。前者ではこれを考慮し、後者では電気機械結合係数の定義からそれを組み込むことができないことによる。その違いはあるが両者の解析から音叉型水晶振動子の基底部を物体へ接触させるとその動的容量が変化するのは音叉の構造に起因して生じていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度の目的の(1),(2),(3)は触覚センサの最適な周波数を求めて製作することにあるが、完成した音叉型水晶触覚センサの動的容量のフォークト体の粘弾性モデルによる理論と実験の一致から32.7kHzの振動子より小さい周波数のものが粘性による容量変化が大きくなることが分かっている。そのため20kHzの振動子の製作を考えたが依頼しようとした企業にはその周波数の振動子を製作した実績がなく、また、試作を繰り返して完全に動作する振動子を入手する目処が立たなかったため、製作を断念した。
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今後の研究の推進方策 |
音叉型水晶触覚センサはアクリルケースで音叉型水晶振動子の基底部を保持する位置によって接触前後で動的容量が低下したり、上昇することが実験で観測されている。このことを明らかにするために3Dプリンターを購入してアクリルケースを含んだ音叉型水晶触覚センサの構造を相似的に大きくしたプラスチック振動子を製作し、圧電セラミックスを貼りつけて屈曲振動させたときの共振状態をインピーダンスアナライザで測定して、等価回路定数を求め、アクリルケースで基底部を挟んだ位置による動的容量の変化の仕方を3Dプリンターで製作したプラスチック振動子の実験で確認し、今までに求めた2つの理論式との比較・検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
20kHzの振動子の製作を考えたが、現在までの達成度の理由のところで述べた理由で最終的に20kHzの振動子の製作を断念した。その結果、次年度使用額が生ずることになった。次年度使用額と25年度に請求した助成金を合わせて以下の使用計画を考えた。3Dプリンターでアクリルケースを含んだ音叉型水晶触覚センサの構造を製作するための3Dプリンターとそれに使う材料、その他に、粘弾性のフォークト体に接触したときの音叉型水晶触覚センサの動的容量の解析と音叉構造による容量変化型水晶触覚センサについて2013 IEEE International Ultrasonics Symposium と 2013 IEEE Sensorsの国際会議で発表するための参加費が必要である
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