本研究は、低体温療法での使用を念頭にした、新生児脳内深部温度無侵襲測定用5周波マイクロ波ラジオメータ装置と関連するアルゴリズムの開発、である。本方法は、生体組織から自然に発生している熱輻射雑音電力を補足しそれを脳内温度分布として再構成するものであり、基本的に雑音を測定する為、測定中の環境雑音電力や装置自体から発生する熱雑音電力に埋もれた雑音電力を測定することになる。したがって、測定中の外来雑音やシステム全体の温度安定性を維持すること等が重要になり、現在までにさまざまな対策を施して来た。新生児の脳中心部を頭部表面から5 cmと仮定すると、研究開始時点の本装置の性能は正確度(accuracy)は約2 ℃、測定の信頼区間に関係する分解能(presicion)は約0.5 ℃であった。後者は臨床現場の要求を満たしているが、前者は誤差がまだ満たしていない。また、この誤差の原因の一つとして測定中にアンテナ開口面に付着する循環冷却水中の微小気泡が疑われていた。 そこで、今年度はその対策として気泡除去装置を新たに導入すると共にアンテナケーブル、システム全体の熱絶縁対策、電磁雑音対策等をすすめた結果、表面から5 cmの位置における測定誤差は約0.5 ℃、分解能は約1.3 ℃であった。臨床現場からの要求は両方ともに1 ℃以内であるので、本研究の結果、ほぼその要求を満たすことができたと考えている。 今後の課題は回路を集積化することでより小さな装置を製作することである。
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