研究課題/領域番号 |
23560506
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
金 亨燮 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80295005)
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キーワード | Image Registration / Computer Aided Diagnosis / Cyber Knife / Mutual Information |
研究概要 |
平成24年度には、平成23年度に構築した異なる画像間の位置合わせ法の高速化を図るため、3次元空間上のすべての画像を用いるのではなく、局所領域内の関心領域を選定し、その領域内の最適な位置合わせ法の構築を行った。なお、本申請研究では画像探索に遺伝的アルゴリズムを用いた。具体的な処理手順を以下に示す。 まず、画像前処理として、ボクセルサイズを統一するため、等方ボクセル化処理を行う。なお、CT画像には金属歯などのアーチファクトと診察台が写っており、頭部の位置合わせには不要であるため、実験的に求めた閾値処理によってこれらの領域を除去する。次に両画像の重心を用いた大まかな位置合わせを行う。さらに、輪郭情報を用いた画像位置合わせを行う。具体的には、まずCT画像に対し、画素値を変換することにより皮膚領域を強調する。次に、2値化と境界線追跡法によるCT画像とMR画像の皮膚領域の輪郭を抽出し、穴埋め処理を行うことにより、頭部の輪郭領域を抽出する。この画像に対し、DSC(Dice Similarity Coefficient)を評価関数とした最適法を構築した。DSCによる最適化では、両画像の重ね合わせの評価値が最大となるような最適化問題を、単純GAを用いて解く手法を考案した。最後に,相互情報量を用いた最終的な位置合わせを行うが、これは、重心と輪郭情報のみでは処理時間の短縮は期待できるが、情報の少なさから、精度に問題が発生することが予想されるため、高精度での位置合わせを行うための評価指標として取り入れる。本申請研究では平成23年度に構築した複数の関心領域(VOI)設定法を用いた位置合わせを行う。 提案法を同一被験者の5症例のCT、MR画像セットに適用した結果、位置合わせの精度を示す相互情報量にはほとんど差がなく、計算時間を大幅に軽減できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請研究では、サイバーナイフによる手術の対象である、頭部CT画像とMR画像のフュージョン画像作成における、画像位置合わせを目的としたコンピュータ支援診断(Computer Aided Diagnosis;CAD)システムの開発を行った。提案した画像位置合わせの最適化法を実データによる精度の検証を行っている。3次元画像処理時に問題となる計算時間を軽減するためには、遺伝的アルゴリズムなどの最適化法を複数組み合わせる方法の考案が必要である。 平成24年度の成果としては、同一被験者のCTとMR画像の異なる画像同士の画像位置合わせ法として、両画像上の輪郭情報を精度よく検出し、かつ計算時間の節約が可能なDSC手法を導入し、大幅な計算時間の削減を達成した(。また、最終的な位置合わせ精度を損なうことのないよう、局所領域内の3次元情報を加味し、両者の条件(精度と処理時間)を満足する画像位置合わせ法を考案している。特に、GAとDSCの組み合わせによる効果は大きく、3次元情報すべてを利用する従来法と比べ、ほぼ精度を損なうことなく1/10の演算時間を達成している。よって、本年度の進捗状況としてはおおむね順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の成果では、同一被験者のCT画像とMR画像を1セットとし、5症例の頭部CT、MR画像を対象に実験を行った実験結果、おおむね良好な結果を得た。特に計算時間の大幅な削減が可能であった。 しかし、症例によっては提案手法は従来手法に比べて相互情報量の値に若干の低下がみられたケースもあった。この原因としては、提案手法における輪郭情報を用いた位置合わせ法では、輪郭の抽出精度に大きく依存することが考えられる。現在は2値画像に対して境界線追跡を施す手法であるが、位置合わせ精度の向上のため、より正確に輪郭抽出を行う必要がある。また、現在はローカルマッチングにおいて、VOIの設置を頭部全体に対して固定で行っているため、症例によっては適切でないVOIが選定されている可能性が考えられる。 これらの問題点の解決策としては、他の輪郭抽出手法を検討すること、VOIの設置を頭部全体でなく、部分的に配置していくことによって、より細かい位置合わせを行うこと等の方法が考えられ、これらは今後の課題である。平成25年度は、平成24年度に明らかになった諸問題を解決すべく、画像位置合わせ精度の向上を図るための非剛体画像位置合わせ法の開発と、CT、MRの両画像上の血管領域を精度よく検出するアルゴリズムの開発を考案している。これにより、3次元血管同士の画像位置合わせによる処理の単純化と精度の向上も見込まれ、有意義であると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、さらなる演算時間の高速化を図るため、高性能なPCの導入を検討中である。また、最終年度であるため、成果発表も積極的に行う予定である。
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