研究課題/領域番号 |
23560508
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
作田 健 滋賀県立大学, 工学部, 教授 (70221273)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | SQUID / 磁気計測システム / 非破壊検査 / 異物検査 / 磁場分布 |
研究概要 |
励起磁場の空間的時間的制御により高速に磁気信号を検出するシステムを構築する本研究課題においては励起磁場を正確に把握する必要がある。そのため、平成23年度は、基本となる磁場発生機構の基本要素とこの磁場発生機構から発生した磁場の空間分布を正確に測定するシステムを作製した。磁場の発生機構の基本要素は、円形コイルを流れる電流と直線に流れる電流を組み合わせることにより、所望の磁場分布を発生させる。これらの電流形状において、所望の磁場分布を構成するために必要な形状の基礎データの収集をおこなった。空間分布を測定するためには、磁気測定素子を空間的に走査させて測定する必要がある。フラックスゲートを走査して磁場の空間分布を測定するシステムをあわせて構築した。本システムは精密型自動ステージを使用し、パソコンによりフラックスゲートの位置を精密に制御するため、50cm四方を最高20ミクロンの分解能が得られる。このシステムは、今後、磁気発生機構コイルの走査にも使用することができ、コイルを動的に移動することで、より所望の磁場分布に近い励起磁場をえる方法についても、あわせて検討を行う。本システムにより、磁場発生基本要素から発生する磁場分布について測定した結果は、シミュレーションより得られる磁場分布と比較をおこなった。現状では、要素形状が単純なため、良い一致を示しており、シミュレーションによる磁場分布の検討と実際の磁場分布計測を相互に実施することで、今後の励起磁場の空間的時間的制御の最適化がより効率的に進めることができるシステムが構築できた。さらに、SQUID磁束計による磁気信号の検出について、磁場空間分布をシミュレーションし、より最適なSQUID形状を検討した。ワッシャタイプの形状を想定し、ジョセフソンジャンクションの形状、ワッシャの形状について設計指針となるデータをえた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今後の研究を進めていくための基礎的なシステムやシミュレーション環境については、予定通り進めることができた。励起信号の発生については、基本要素の特性評価を実施し、シミュレーション結果との一致を確認でき、さらに信号検出時刻による欠陥場所特定についても実現しており、現在進めているシミュレーションと実測による磁場分布の最適形状の抽出を進めていけばよいと考えている。SQUID磁束計による極微弱磁気信号の検出について、本年度にSQUID磁束計を含む測定系の検討をすすめた。超伝導素子を含む磁場分布についてもシミュレーションによる解析、設計を行うための基本手法、基礎データを得ることができ、今後継続的に検討予定であったシステム形状設計については目的を達成していると考える。雑音キャンセルシステムについても、マイコンあるいはディジタル信号処理回路(DSP)によるリアルタイム雑音処理システムの基礎構成は実現しており、問題なく今後も見当を進める。しかしながら、微小信号を検出するために用意しているSQUID素子を用いた実験を行うところまで、進んでおらず、極限計測という点に対して対応が遅れたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度は、(1)電気的制御による所望の時間的空間的分布をもつ磁場の生成および(2)SQUID磁束計による極微弱磁気信号の検出であり、平成24年度以降は、(1)および(2)の基本システムの最適化に加えて(3)磁気画像イメージおよび欠陥イメージの再構築および(4)複数の基本システム要素の組合せによる、高速化、測定領域の広域化、高感度化の検討を予定している。今後の推進方策は、まず早急にSQUID素子による測定ができるシステムを立ち上げる。これは、雑音が多くSQUIDを安定に動作させることができなかったことが主な要因である。現在、シールドを含めた雑音対策を実施しており、実験を進めることができる。(1)および(2)について、今後も検討をすすめ、システムの最適化を図る。これについては、実験システムおよびシミュレータのより効果的なサイクルを実現し、効率よく最適条件を求めるようにする。また、リアルタイム雑音除去システムについても、より効果的なプログラムの開発およびハードウェア構成に検討をすすめる。(3)磁気画像イメージおよび欠陥イメージの再構築に関して、フーリエ変換とグリーン関数を用いたアルゴリズムおよび励起磁場の波形シーケンスの工夫による簡単な処理でのイメージを推定手法も総合的に検討し、磁気イメージ像再構築の各手法を考案し性能を評価する。また、(4)複数の基本システム要素の組合せによる、高速化、測定領域の広域化、高感度化について、先に述べたようにSQUID磁束計の測定システムを早急に立ち上げたうえで、SQUIDの複数化に対応できるシステムを検討し、より高性能化する。単純に数を増やしただけでは、基本要素が干渉しあうので、マルチ化に最適な信号シーケンス、素子配置および信号処理手法について検討する。最終的に、マルチチャンネル化を含めた本システムの基本性能を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本システムは、計測系の機械的制御および電気的制御と雑音および画像の信号処理を行う必要がある。特にリアルタイムでの制御が必要であり、1台の制御系をあてることが望ましい。そのため、これらの要求を満足する性能をもったシステム制御用ワークステーションを購入する予定である。また、SQUID磁束計を複数化したシステムを検討するため、新規にSQUIDセンサーおよびそのコントローラを購入する。また、周辺回路の自作および改造のための各種電子部品、さらに簡単な制御システムを内蔵するFPGAといった電子部品を購入する。
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