研究課題/領域番号 |
23560508
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
作田 健 滋賀県立大学, 工学部, 教授 (70221273)
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キーワード | SQUID / 磁気計測システム |
研究概要 |
励起磁場の空間的時間的制御により対象磁性体を磁化し,磁化した対象物からの磁気信号を検出することで,高速に磁性異物や欠陥を検出することを目的とする本研究課題においては励起磁場に対して磁性異物がどのように反応するかを正確に把握する必要がある。そのため、平成25年度は、励起磁場に対して,磁性異物がどのように磁化され,それがどのように検出できるかについて,さらに,磁性異物からの検出される磁気信号から,その磁性異物の場所特定の手法について,昨年に引き続き詳細に検討を行った。また,検出した磁気信号の信号処理のため,SQUID磁束計FLL回路のディジタル化の検討を行った。さらに,雑音除去のための信号処理アルゴリズムについて,検討を行った。 異物の場所検出のため,磁化励起電流の配線パターンによる特性の違いを検討した。一般に多くの配線を配置し,さらに被測定物に近づけることにより,強い信号が検出できるが,検出磁束密度の比によって場所を特定する場合には,線間距離をあまり近づけすぎると,比の変化幅が小さくなりすぎ,検出誤差が大きくなることがわかった。 FLL回路は,検出信号の信号処理にあわせて,ディジタル化が望ましい。そこで,ディジタルFLL回路について,アナログ式とディジタル式の特徴をあわせもつデルタ変調方式FLL回路について検討をおこなった。ディジタル式と比べて,比較的容易に高周波対応が可能である見込みが得られた。検査時には高周波雑音によるFLL回路のロックが外れる場合を少しでも減らすことができるのではないかと考えられる。 さらに環境雑音を低減して測定をおこなうアクティブノイズコントロールについて,1入力対応について検討をおこなった。雑音をあらかじめ記録し,参照信号として利用することで,雑音低減が実現できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年まで基礎的なシステムやシミュレーション環境構築,実際の磁性異物検出に向けて,シミュレーションによるシステム構成および動作確認を行うことができた。さらに,個別の要素技術であるFLL回路の検討,アクティブノイズコントロールシステムの改善といった点で知見を得ることができた。しかしながら,実測による磁場分布の確認までいたらず,この点を早急に進める必要があると考えている。 SQUID磁束計による極微弱磁気信号の検出について、本年度にSQUID磁束計を含む測定系の予定であった。SQUID磁束計の動作を確認することはできたが,実際の異物からの磁気信号に関しては,環境磁気雑音に対するシールドの関係で明確に得ることができず,実測による検討が進まなかった。 雑音キャンセルシステムについても、マイコンあるいはディジタル信号処理回路(DSP)によるリアルタイム雑音処理システムの基礎構成は実現した。フラックスゲートによる動作確認をおこない,適切なパラメータ調整システムが可能になった。しかし,SQUID磁束計に実装する予定であったが,上記のようにSQUID磁束計の動作が不安定なため,実物での性能チェックにはいたらなかった。 イメージ像の再構築については,実際の磁気イメージを得ることができず,画像処理の準備に終わっている。 微小信号を検出するために用意しているSQUID素子を用いた実験を行うところまで、進んでおらず、極限計測という点に対して対応が遅れたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、(1)電気的制御による所望の時間的空間的分布をもつ磁場の生成および(2)SQUID磁束計による極微弱磁気信号の検出,(3)磁気画像イメージおよび欠陥イメージの再構築および(4)複数の基本システム要素の組合せによる、高速化、測定領域の広域化、高感度化の検討であった。 極微弱磁気信号の検出に必須であるSQUID素子による測定ができるシステムがうまく動作しなかった。これは、雑音が多くSQUIDを安定に動作させることができなかったことが主な要因である。現在、シールドを含めた雑音対策をおこない,SQUIDの動作は可能になったが,まだ雑音が多く微小信号の検出に手間取ってしまった。ようやくアクティブノイズコントロールもあわせて対策がすすみ,遅れていた微小磁気計測の実験を進めることができる。 これより,ようやく磁気イメージからの実像再構成システムの検討も進めることができる。画像再構成のアルゴリズムを検討する。 さらに,今年度マルチチャンネル化を予定しており,複数の基本システム要素の組合せによる、高速化、測定領域の広域化、高感度化について、先に述べたようにSQUID磁束計の測定システムを早急に立ち上げたうえで、SQUIDの複数化に対応できるシステムを検討し、本システムの基本性能を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
磁気計測性能を高性能化する目的で,SQUIDのマルチチャンネル化のため,電流制御のためのレイアウトおよびシーケンス条件,さらにSQUIDレイアウトの検討を行っていた。しかしながら,検討パラメータが多く,最適な条件の抽出が遅れた。そのため,現有の磁気シールドボックスで対応可能なシステムのためのSQUIDセンサーおよび制御装置の詳細な仕様設計が間に合わず,予定していた機器の購入ができなかった。 マルチチャンネル化のためにSQUIDセンサーとそのFLLコントローラ,および電流制御システムを購入する。さらに,これまでの検討によりディジタル化が高性能化に有効とおもわれるため,ディジタル電子回路部品を購入する。
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