励起磁場の空間的時間的制御により対象磁性体を磁化し,磁化した対象物からの磁気信号を検出することで,高速に磁性異物や欠陥を検出することを目的とする本研究課題においては、最終年度は、異物の位置特定を可能とするシステム設計について、検討した。また、磁性体および非磁性体の異物について、同一のシステムで検出するための励磁-SQUID磁束計システムについて、高周波対応化、利得補正、FPGAによるFLL回路のディジタル化の検討を行った。さらに,雑音除去のための信号処理アルゴリズムについても,引き続き検討を行った。 異物の場所検出のため,磁化励起電流の配線パターンおよび励磁信号を複数の周波数を利用することで、その検出信号パターンにより、位置特定を容易に行えることがわかった。 複数の周波数を利用する場合、FLL回路はできるだけ広帯域化が望まれる。しかしながら、FLL回路は積分器を用いるため、高周波帯域での動作が困難である。そこで、帰還信号の周波数を分離し、低周波帯域を帰還、高周波帯域の信号は直接取り出すことで広帯域化を実現し、さらにこれにより磁性体および非磁性体の検出感度を向上させることができた。また、FPGA化の検討については、単純なアナログ動作のディジタル信号処理への置き換えを狙ったが、ダイナミックレンジの確保に難があり、積分動作におけるロックの外れが問題となった。帰還処理のアルゴリズムの改善により対応が可能であり、今後検討を進めたい。 環境雑音を低減して測定をおこなうアクティブノイズコントロールについて、利用するディジタルフィルタの形式について検討をおこなった。FIR型とIIR型において、商用電源などの周期的な雑音については、IIR型が収束時間、減衰量において、良好であった。一方で変動する雑音に対しては、違いはあまり見られないことを確認した。
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