研究課題/領域番号 |
23560510
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
中宮 俊幸 東海大学, 産業工学部, 教授 (90155812)
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キーワード | 国際情報交換 / ポーランド / ヨーロッパ / 光波マイクロホン / 放電音 / 大気圧プラズマ |
研究概要 |
雰囲気ガスを変えて大気圧プラズマを発生させるために、オゾン生成用として使用されている放電電極をチャンバー内に設置し、高電圧を印加した。容器の外側から、光波マイクロホンの半導体レーザ光を導入し、電極の1cm真上にビームを通し、回折像強度が最大となる位置に、光検出器を固定した。放電音が入射する領域の半導体レーザビームの直径は2mmであり、40kHzの周波数領域で最も検出感度が高くなるように設定した。この光検出器からの電気信号と比較するために、通常のコンデンサマイクロホン(RION UC-31、周波数帯域:10 Hz~100 kHz)を、電極から10cm離れた真上に設置した。さらに、高圧プローブによる印加電圧波形と、シャント抵抗(50 Ohm)から得られた放電電流波形をデジタル・オシロスコープ(Tektronix DPO4104B、23年度購入設備)で測定した。4チャンネル(電圧電流波形及び両マイクロホンの信号波形)同時に記録し、電源電圧値や周波数及び雰囲気ガス(He、Ar、N2)を変え、放電状態を変えることで、音波の周波数成分の変化や強度を調べた。 電極部に正弦波(5 kVpp、35 kHz)の電圧を印加して、雰囲気ガスをHe(分子量:4.02)、N2(分子量:28.0134)やAr(分子量:39.948)に変えた場合について、実験を行った結果、雰囲気ガスの分子量が大きくなるほど、放電音の強度が強くなった。コンデンサマイクロホンでは、放電音の信号が弱いため検出する事ができなかった。さらに、生成されたプラズマの2次元放電音場を、光波マイクロホンとCT(Computed Tomography)技術を組み合わせた装置(光波マイクロホン―CT)で計測した。電源電圧、周波数及び雰囲気ガスを変えて、放電音の固有周波数成分や音場分布に対する影響を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述のように、放電電極をチャンバー内に設置し、放電電極に正弦波(5 kVpp、35 kHz)の電圧を印加して、雰囲気ガスをHe(分子量:4.02)、N2(分子量:28.0134)やAr(分子量:39.948)に変えた場合について実験を行った。光波マイクロホンでは放電音を検出する事ができたが、コンデンサマイクロホンでは、検出する事ができなかった。Ar雰囲気の放電電流はN2雰囲気の放電電流よりも大きく、放電音も2倍ほど大きくなる事が分かった。Ar雰囲気ガス中で、電極への印加電圧を5 kV一定とし、周波数を45, 35, 25 10 kHzと変化させた。周波数が低くなるにしたがって電極のインピーダンスは大きくなるので、放電電流は減少し放電音も小さくなった。 光波マイクロホン―CTを用い、Ar 及びN2雰囲気中で、印加電圧5 kV、周波数 35 kHzの場合の2次元放電音場を計測した。強い音の領域は、何れも上部電極の周辺に位置しており、Ar 雰囲気の場合、N2雰囲気中よりも強い音が発生している様子を可視化する事ができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.位相情報を考慮した2次元音場の計測 2次元音場の強度分布の可視化の技術開発をさらに進め、音源からの位相情報を考慮したCT技術の開発を試みる。予備実験として、放電電極の代わりに超音波振動子を2個、距離を離して設置し、発信器からそれぞれの超音波振動子に位相差のある正弦波信号を送り、2次元音場の強度及び位相分布を求める。 2.光ファイバーを用いた光波マイクロホンシステム 光波マイクロホンの小型化や安定性向上のために、光ファイバーを用いたシステムの開発を進める。具体的には、半導体レーザ装置からの光を光ファイバーに導入してコリメートレンズから空中に放出し、放電音によって生じた散乱光を含むレーザ光を対向位置にあるコリメートレンズで集光する。光ファイバー内を伝播したレーザ光を、反対側のコリメートレンズから再度空中に射出し、フーリエレンズシステムを通して、放電音に伴う信号の検出を行なう。光波マイクロホンのSN比向上のために、ファブリペロー共振器による光増幅器についても可能性を検討する。これらの機器を使って、大気圧プラズマの生成に伴って発生する超音波の分布を可視化し、大気圧プラズマにおける音情報の有用性についてさらに明らかにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、研究の進捗状況及び経費の有効利用について極力配慮をしながら研究を進めた結果、約23.8万円の繰越額が生じた。 次年度では、「今後の研究の推進方策」で述べた事項を進めるために、光ファイバーやファブリペロー光共振器などの光学部品、及び研究成果を国内外で公表するための出張旅費を予定している。
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