本研究は、シリコン半導体ウエハを測定対象とした放射測温法を実用に供す場合に、その放射率を補正する放射率補正放射測温法を確立して信頼性の高い測温手法を提供すること、および測定対象を取り巻く周囲の温度が極端に高い状況、いわゆる極端に非平衡温度場環境において、加熱ランプからの強烈な背光放射輝度スペクトルと測定対象からの微弱な放射輝度スペクトルを完全分離する手法を確立して、背光放射を実質的に取り除く手法を提供すること、の2点からなり、両者を組み合わせることによって、総合的な測温システムを設計構築することを目的とする。 本年度の研究実績を以下に示す。 1.前年度では石英板と5ミクロンに検出波長をもつ偏光放射計(HgCdTeセンサ)を試作して背光放射を完全にブロックすることができたが、本年度はさらに石英板上に水薄膜を形成し、1.43ミクロンに検出波長をもつ偏光放射計(InGaAsセンサ)を試作して、同様に背光放射を遮蔽する手法を見出した。また、0.9ミクロンに感度を有するSi偏光放射計も試作し、この場合背光放射の遮蔽は想定どおり困難であることを実証した。いずれも「ノイズ係数」という名で定義したパラメータを導入し、それを測定することにより、任意の環境条件下において背光放射を定量的に見積もり、放射測温システム構築する設計手法を確立した。 2.測定対象のシリコンウエハは600℃以下の温度で半透明体となる条件があるが、この場合にも放射測温法と透過特性を利用した測温法の組み合わせにより、低温領域から1000℃を超える高温領域まで有効な非接触温度計測システムを提案した。 これらの研究成果は、学術誌論文(Measurement)に1編(掲載決定)、また投稿中の1編(Int. J. Thermophysics)のほか、国際会議での発表1件、国内学会発表3件(うち1件招待講演)、図書2編という形で公開した。
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