研究課題/領域番号 |
23560512
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
橋本 学 中京大学, 情報理工学部, 教授 (70510832)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | temporal stability / co-occurrence / template matching |
研究概要 |
本年度は,時空間濃度共起モデルの提案および画像の安定性推定を考慮したマッチングアルゴリズムの構築を目的として研究を実施した.複数の画像における時間共起モデルとして,連続的に取得された2枚の画像間の同一座標における濃度値の共起性を2次元共起ヒストグラムとして表現するモデルを提案した.このヒストグラムは濃度共起確率を表すが,画像間の濃度値が近いほど対角線上にデータが分布し,そうでない場合には対角線から離れた位置にデータが散らばる.すなわち,このモデルを分析すれば,2枚の画像間の画素毎の濃度変動すなわち時間的安定性を数値化することが可能となる.さらに,この分析を時間間隔が異なる複数の画像ペアに適用することによって,短時間変動と長期間変動を同時に分析することもできる.一方,空間的に独自性の高い画素ペアを画像照合に利用する手法を提案済みであったため,これに今回の研究成果を組み合わせる手法についても検討した.空間的独自性も画素ごとの発生確率で表現できることから,時間的安定性と組み合わせることで,空間的に独自性が高く,なおかつ時間的にも安定している画素を選択する基準を提案することができた.この考え方に基づいてテンプレートマッチングアルゴリズムを構築し,プロトタイプシステムを開発し,実画像を用いた実験によってその効果を実証した.従来のテンプレートマッチングアルゴリズムではテンプレート画像の全画素を使用していたが,提案手法ではその1%程度以下のきわめて少数の画素を用いるだけで認識率97%程度,処理速度は従来の100~500倍以上を達成することを確認できた.これらの成果を学会で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的として,時間共起モデルの提案,空間共起モデルとの統合方法の提案と定式化を達成できた.さらに,このモデルをもとに画像マッチングアルゴリズムの構築とプロトタイプシステムの試作,およびその性能実証実験も達成できた.性能としても,当初の予定通り,安定性,高速性の両面で優位であることを実証できた.以上のように当該年度に予定していたすべての成果は順調に達成できた.ただし,実験的検証については,照明変動以外の状況下での実験など,新たに重要と思われる項目も発生した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,これまでの検討を踏まえ,画像間の関係等を規定するパラメータの自動決定アルゴリズムの構築が必要である.画像の性質を,その空間的な周波数構造で表現することによって,性質と最適パラメータの関係の明確化を試みる.パラメータの最適化には,最適化技法としての遺伝的アルゴリズムや各種学習手法の適用が考えられるが,これまでの検討からこの問題は多くの画素から最適な画素を選択する組み合わせ最適化問題として捉えることが妥当と考えられるため,初期検討としては前者のアプローチをとり,必要に応じて学習型手法の検討を追加する.
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度においては,提案技術の実用性能の確認を優先したために,検証実験に関して日照変動など現実の状況下での画像取得を最優先する計画に変更した.その結果,当初計画していた模擬的な照明環境を再現するための一連の実験設備に必要な人工照明装置や制御用PCの購入を延期した.これにともない,研究費用の一部の執行を次年度に変更し,予定通りの実験を遂行する.場合によっては,画像加工ソフトウェアによって模擬的な画像を人工合成するほうが効率的な検証が行える可能性もあるため,研究の進捗状況によってはこのソフトウェア購入あるいは追加的な開発作業費用として投入する.また,次年度は最適化アルゴリズムおよび学習型アルゴリズムの新規開発が不可欠となるため,アルゴリズム開発用PCシステムを製作する.単体のハイエンドPCあるいは複数のPCによる並列処理マシンを開発する.またPC開発とその性能維持に必要な部品,認識対象物体の購入および試作もおこなう.さらに,画質劣化状況下での性能実証実験のために模擬的に画質を操作するためのPC用ソフトウェアも導入する計画である.研究成果のタイムリーな広報のために,学会発表および関連研究の調査研究も実施する必要があるため,国内旅費,外国旅費,学会参加費および論文投稿費用を計上する.また,大量の画像データの取得とデータ整理のために,実験補助者に対する謝金も使用する計画である.
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