研究課題/領域番号 |
23560518
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研究機関 | 大分工業高等専門学校 |
研究代表者 |
岡 茂八郎 大分工業高等専門学校, 情報工学科, 教授 (80107838)
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キーワード | 非破壊検査 / 疲労 / 磁気センサ / 渦電流法 / 直流磁界 / 鉄系構造材 |
研究概要 |
平成23年度の研究の成果が平成24年度当初,査読付き論文として「Fatigue Evaluation of Low Carbon Steel by Means of the Inductance Method Using a Pancake-Type Coil,日本AEM学会誌」として掲載された。前年度の研究の成果を踏まえて,ネオジム磁石による平行直流励磁を組み合わせたパンケーキコイルを用いた低周波励磁型インダクタンス法をSS400の適用する研究を行った。この研究の結果は,「Examination of the Inductance Method for Non-Destructive Testing in Structural Metallic Material by Means of the Pancake-type Coil, 第7回応用電磁力に関するアジア太平洋シンポジウム講演論文集」において発表した。この直流励磁を備えた低周波励磁型インダクタンス法は,片振引張疲労を試料の抵抗率の変化としてよくとらえていた。また,検出信号に対する表面の傷等の影響も軽減できた。また,同様の方法を用いてフェライト系ステンレス鋼のSUS430を対象として疲労検出実験も行った。その成果は,「Fatigue Evaluation of the Iron-based Structural Material (SUS430) by the Eddy Current Sensor under the DC Magnetic Field,第15回応用電磁力に関する日本韓国シンポジウム講演論文集」で発表した。SUS430においては,透磁率の変化と抵抗率の変化が同時に起こり多少従来の従来の結果とは疲労検出特性は異なっているが,直流励磁の方が疲労と検出出力の関係が安定していると言う結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記評価の理由は,第1に,疲労試験の対象となる鉄系構造材の範囲を低炭素鋼,構造用炭素鋼(SS400),フェライト系ステンレス鋼(SUS430)と広げることができ,そのすべてにおいて疲労とセンサ出力の関係を明確に示すことができた点である。従来の研究から,本研究で用いている渦電流を用いたインダクタンス法では,鉄系構造材の疲労の蓄積量を計測する場合においてその材料の組成や組織の状態によってその検出能力が大きく左右されることが分かっている。そこで,このように疲労を検出できる対象を逐次広げていく必要がありこの点において成果があったといえる。また,第2に,従来,傷の検出法などには適用されていたが疲労検出法に適用されていなかった透磁率の低減による表皮効果の軽減を目的とした直流励磁を疲労検出に適用し,一定の結果を得たことである。我々の実験によれば,SS400においては,直流励磁下では抵抗率の変化のみで疲労の蓄積を検出することになるため,透磁率の変化の影響を受けず安定した疲労とパンケーキ型コイルのインダクタンスの変化の関係を得ることができることが分かったことである。SUS430については多少透磁率の変化の影響も検出されたがこの点についてはさらに大きな直流磁界で励磁できるように工夫するなどの対策をとり次年度の研究に生かすつもりである。さらに,今年度は,予備実験として3連コイル型の磁気センサによるSUS430の疲労検出実験を行うことができた点も成果として挙げられる。今年度の3連コイル型磁気センサは,従来のパンケーキ型コイルを用いていたが,多少,感度等に問題があることが分かったことも成果である。さらに,マルテンサイト型ステンレス鋼に対しての予備実験を終えた。よって,この研究は,概ね順調に遂行できていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,ネオジム磁石を界磁に用いた平行直流磁界を用いたパンケーキ型コイル磁気センサを用いてSS400などの軟鋼やフェライト系ステンレス鋼であるSUS430などを対象にして平成24年度にできなかった実験を行う予定である。対象材料の拡張としては,オーステナイト系ステンレス鋼のSUS304やSUS316への拡張,さらに,昨年度に実験が中断しているマルテンサイト系ステンレス鋼のSUS410への拡張を考えている。これらに材料に対してパンケーキ型コイルを用いたインダクタンス法を直流励磁有り無しの状態で適用し,その適用可能性を検証する。さらに,この中で,さらなる励磁の低周波化の可能性を探り,より深い位置での疲労検出に道筋を立てる予定である。また,3連コイル型磁気センサの改良が進んでいるので,これを用いて各種鉄系構造用を対象にして評価実験を行っていきたい。また,3連コイル型磁気センサにおいても,直流励磁の有り無しでの比較や,さらなる励磁周波数の低減の可能性などを探っていきたいと考えている。一方,今年度の後半には,新しい平面曲げ疲労試験機が導入される予定であるので,現在の繰返片振引張疲労試験に加えて平面曲げ疲労試験での各種材料の対象物や各種形態の磁気センサの可能性を探りたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度までに手当された研究費でこの研究の展開に必要で予定していた機器は買い揃えることができた。そこで,今年度の研究費は,主に,各種疲労試験の対象となる試料の購入(SUS304, SUS410, SUS316L等)と研究成果の発表のための旅費等に充てたいと考えている。なお,実験が進むにつれて,消耗品的なものが必要になればその都度対応する予定である。また,研究成果の公表のために,論文投稿料等に使用する予定である。
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