研究概要 |
(1)ループ管予備実験装置の製作と定在波抑制制御の基本性能検証直径10cmの塩ビ管を使用し、周長約3mのループ管を構成した。二つのスピーカの駆動信号をw,vとし、v(t)=-w(t-τ),τをスピーカ間の距離に応じたむだ時間とすることで、指向性音源を構成した(従来システムにおけるプライムムーバと、定在波を抑制用の制御音源を兼ねる)。スタックなしの状態で管内に生じる進行波・定在波の比率を調べた。管内でマイクを移動させて音圧分布を測定するとともに、クントの実験の原理で音圧分布を可視化した結果、パワーアンプの個体差、ループ管の曲がり部分(エルボ)における乱流の問題があり、物理モデルとの整合性が十分でないことがわかった。この状態でもロバスト制御系設計はできるため、この問題の解決は後に回し、制御系設計に進んだ。進行波をとらえるため、二つの圧力センサを用いて指向性センサを構成した:センサの出力をz,y とすると、e(t)=z(t)-y(t-τ),τを圧力センサ間の距離に応じたむだ時間とすることで、完全な進行波音場の場合にe=0を出力するセンサとなる。定在波の抑制を、eをできるだけ小さくすることと捉え、スピーカの駆動信号を補正する補償器を設計した:一方のスピーカの駆動信号vをv+uとし、センサ出力yから補正項uを生成する補償器を、wからeまでのH∞ノルムを最小化する制御問題を解いて求めた。制御実験の結果、実際にeが小さくなる制御系が実現できたが、スタック両端の温度差は制御なしの方が大きかった。z,y自体の振幅を小さくするような制御系となったことが原因と考えられる。(2)従来システムの製作直径約5cmのステンレス管(サニタリー管、厚み約1mm)を用いて、周長約3mのループ管を構成した。スタックを収める部分、マイク、スピーカを収める部分を別ユニットに分け、クランプで接続するようにした。
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