研究課題/領域番号 |
23560524
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
西川 敦 信州大学, 繊維学部, 教授 (20283731)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 筋骨格ロボット / ロボットハンド / バイオロボティクス / バイオミメティクス / 関節モデル / 転がり接触 / 筋シナジー / 空気圧アクチュエータ |
研究概要 |
本研究では、ヒトと同様に拮抗筋群を協調させて運動する筋骨格ロボットの制御の基本問題として、運動学データと筋協調パターンが1対1に対応しないケース(ベルンシュタイン問題として知られる冗長自由度問題)を陽に考える。筋骨格5指ロボットハンドを具体的な制御対象とし、ヒトの筋シナジーの生成の仕方(筋シナジー仮説)をヒントに、タスクに応じて「運動学データと筋協調パターン(筋拮抗比)の関係」を記述すること、ならびにその関係を用いて筋骨格ロボットを制御する新しい方法(シナジー制御法)を確立することが本研究の最大の目的である。 平成23年度は、上記基本問題を考察するハードウェア基盤となる新たな筋骨格ロボットフィンガー(転動関節モデル)の構築を中心的に進めた。 「転動関節モデル」は、ヒトの中手指節関節の構造を模倣して考案した関節モデルであり、主として、ヒトと同様、骨(中手骨リンクと基節骨リンク)、筋(屈筋アクチュエータと伸筋アクチュエータ)、腱(ワイヤ)から構成され、中手骨リンク頭が掌側に長軸をとる4分の1楕円形であり、半径一定の円である基節骨リンク底が中手骨リンク頭上を「滑らずに転がる」ように設計した関節モデルである。この新規設計・製作した転動関節モデルを用いて、筋協調と関節角度の関係を導く基礎実験を行った。その結果、転動関節モデルは、構造上、伸展側・屈曲側ともにヒトの中手指節関節の可動範囲に極めて近い挙動を示すこと、筋拮抗比と関節角度が上記可動範囲内でほぼ線形関係にあり、従来の回転対偶を有する回転関節モデルに比べ、アクチュエータの疲労や制御特性の点で優位性があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目的は「筋骨格ロボットハンドのシナジー制御法の確立」であり、本研究費申請時の研究計画調書においては、そのハードウェア基盤として最も頻繁に使用する基本モデル:「示指モデル」の強化と再構築(現有モデルからの部分的な設計変更を含む)を、初年度(平成23年度)の必須実施項目として掲げていた。 これに対して、本年度の研究により、上記現有モデル(回転対偶を基本構造とする関節モデル)に比べ制御特性や可動範囲の観点で優位性がある新規モデル(転動関節モデル)を考案し、同モデルの設計・製作ならびにその新規モデルを用いたシナジー制御の基礎実験まで完了することができた。新規モデルの挙動の理論的解析や従来モデルとの比較実験については次年度の研究に持ち越したものの、新規モデル自体は当初の想定を大きく上回るパフォーマンスを達成しており、トータルでは、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、初年度に構築したハードウェア基盤(転動関節モデル)の理論解析・従来モデルとの比較実験と並行して、当初の予定通り、ヒトの把持・物体操作タスクをデータグローブ等を用いて計測・解析し、ロボットハンドに移植する研究を中心的に実施する。また、ヒトの手指の運動解析結果に基づいて、ハードウェア基盤の更なるブラッシュアップ(よりヒトの関節構造や筋肉配置に近い筋骨格ロボットフィンガーの開発)も試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画では、初年度までの研究成果発表を「初年度末」に実施することを見込んでいたが、研究の進捗状況により、「次年度の初め」に開催されるロボティクスの分野で定評のある国内最大規模の学会(ROBOMEC2012)において成果発表することとなったため、次年度使用額(140,000円)が生じた。 以上の方針変更のため、この使用額分ついては、「平成24年度前半までに」研究成果の学会発表費(旅費)ならびに論文投稿費として全て使用する予定である。次年度請求費については、当初の計画どおり、主に、ハードウェア基盤のブラッシュアップ費用ならびに学会参加・発表費用に充てる予定である。
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