研究課題
本研究では、ヒトと同様に拮抗筋群を協調させて運動する筋骨格ロボットの制御の基本問題として、運動学データと筋協調パターンが1対1に対応しないケース(ベルンシュタイン問題として知られる冗長自由度問題)を陽に考える。ヒトの筋骨格構造(特に関節構造やアクチュエータ配置)を模倣したロボットハンドやロボットフィンガーを具体的な制御対象とし、ヒトの筋シナジーの生成の仕方(筋シナジー仮説)をヒントに筋骨格ロボットを制御する新しい手法(シナジー制御法)を確立することが本研究の最大の目的である。平成24年度は以下の3点の研究を並行実施した。(1)ハードウェア基盤の挙動の理論解析(筋協調の力学モデリング):ヒトの中手指節関節の構造を模倣して初年度に構築した2本の空気圧アクチュエータで拮抗駆動する「転動関節モデル」の理論解析(筋協調の力学モデリング)を行い、実機の挙動との比較・評価を行った。ただし、現時点では、理論と実機が一部合致しない点があり、更なる詳細なモデル化が必要である。(2)ハードウェア基盤の整備・改良(転動関節改良型モデル):関節部に「滑り」「転がり」の両方の要素を取り入れ、前年度までの屈曲・伸展の1自由度に加え「外転・内転」が可能な計2自由度を有する示指MP関節モデル(転動関節改良型モデル)の提案・構築を行った。新規設計・製作した転動関節モデルを用いて、筋協調と関節角度の関係を導く基礎実験を行った結果、屈曲・伸展運動のパフォーマンスは低下せずに、ヒトと同程度の可動範囲で外転・内転運動も実現することに成功した。(3)ヒトの手指の物体把持の姿勢と把持力の解析:簡単な形状の物体を対象とした複数の被験者の手指の物体把持時の「把持姿勢」と「把持力」をそれぞれデータグローブならびに面圧シートセンサを用いて計測し、測定結果を主成分分析することによって、把持姿勢と把持力の構成要素を見出した。
2: おおむね順調に進展している
本研究の最終目的は「筋骨格ロボットハンドのシナジー制御法の確立」であり、本研究費申請時の研究計画調書ならびに昨年度(平成23年度)研究実施状況報告書の今後の推進方策においては、(1)初年度に構築したハードウェア基盤(転動関節モデル)の理論解析・従来モデルとの比較実験、(2)ヒトの把持・物体操作タスクをデータグローブ等を用いて計測・解析し、ロボットハンドに移植する研究の準備、(3)ハードウェア基盤の更なるブラッシュアップ(よりヒトの関節構造や筋肉配置に近い筋骨格ロボットフィンガーの開発)の3点を平成24年度の実施項目として掲げていた。これに対して、「研究実績の概要」に記載したとおり、(1)~(3)のすべてについて当初の予定通り概ね達成することができた。ただし、(1)については、更なる詳細な理論解析が必要であり、次年度も引き続き検討を進める。
次年度(最終年度)は、本研究の最終目的「筋骨格ロボットハンドのシナジー制御法の確立」を念頭に、前年度に引き続き、更に多数の種類の物体に対してヒトの手指の把持姿勢と把持力の計測・解析実験を進め、把持パターンのデータベースを作成し、主成分分析や独立成分分析を駆使してシナジーを抽出するとともに、前年度までに構築したハードウェア基盤(ロボットハンドやロボットフィンガー)でのシナジー制御を移植・実現・評価し、本研究成果を総括する。
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Journal of Mechanics Engineering and Automation
巻: Vol. 2, No. 12 ページ: 709-719
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