研究課題/領域番号 |
23560525
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
坂本 登 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00283416)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流,チェコ共和国 |
研究概要 |
本年度は,状態推定器設計の常識である誤差システムを作らない手法を考案した.非線形システムでは,誤差システムは状態変数の誤差だけでかくことが原理的にできない.このことが,推定器の構成理論を不可能にしていることを重視し,誤差システムではなく,推定される状態と推定器の状態の間に不変多様体を構成する理論を開発した.この不変多様体は,適当な非線形変換と状態変数の拡大によって,ある常微分方程式の安定多様体に帰着させることができる.この固有値移動非線形変換の発見がきわめて本質的であった.したがってこの不変多様体の計算は,安定多様体の計算によって行うことができ,私が過去に行ったハミルトン・ヤコビ方程式の計算アルゴリズムが流用できる.理論的な証明に加え,いくつかの数値例題によって,この理論の検証を行った.この成果は,制御理論における主要国際会議,IEEE, 51st Annual Conference on Decision and Control(2012)へ,"Stablemanifold-based design of a nonlinear observer and its numerical construction" (B.Rehak and N. Sakamoto)として投稿した.この理論の適用範囲はきわめて広く,原理的には有限次元の適当な滑らかさをもつ非線形システムであれば,常に適用が可能である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
状態推定器を誤差システムを作ることなく構成するアイディアは極めて新規性があり,さらに研究代表者が過去に行ったハミルトン・ヤコビ方程式に対する安定多様体の計算理論が流用できることが分かった.このことは,今後の実システムへの適用を考えると,重要な意義があると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では,不変多様体の構成による推定器設計理論をより深めることに加え,実システムへの適用を積み重ねる中で,計算アルゴリズムの高速化,高次元対応を行うことになる.まずは,機械システムや低次元カオスシステムのような,2~3次元システムから始める.低次元システムであっても,状態推定器として機能するには,広い領域での不変多様体が計算できなければならない.さらに,生物系,化学プラント系では容易に10次元を超える.このような次元の不変多様体の計算は,数学の分野でも行われていないが,工学への応用では避けることができない問題である.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は,理論研究打ち合わせのための海外旅費(チェコ),実験検証のための装置費,計算アルゴリズム開発のための高速計算機などの費用を計上する.
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